2008 年 3 月 30 日
オーストラリアにて(その2)
ケアンズから世界遺産グレートバリアリーフへ行った。グレートバリアリーフとはサンゴ礁であり、その地域全体の面積は日本列島のそれよりはるかに広いという壮大なものだ。その中の一部、モアリーフというところにポンツーン(デッキのようなボート)が係留してあり、そこまでケアンズ港から高速船で1時間以上かけて行く。そのポンツーンをベースに、グラスボートに乗ったり、シュノーケリングやダイビングを楽しんだりするのである。そのツアーに参加した客は日本人が3割くらいで、他に中国系、アメリカ系、もちろんオーストラリア人もいた。
さて、この船がリーフに着くまで1時間以上かかるのだが、これがやたらと揺れる。船は比較的新しい双胴タイプの高速船で、昔の船のようにゆったり揺れるという感覚はない。速度が速いのでローリング(横揺れ)、ピッチング(たて揺れ)ともまるでジェットコースター並みの迫力だ。この間、日本人の乗客の多くが船酔いに苦しんだ。幼い子供連れの家族など、ご主人、奥様、子どもまで、話もできないほどの苦しみ方で、子どもは着ている服を嘔吐で汚してしまい、なんとも気の毒な情況であった。新婚と思われるカップルも甘いムードはどこへやら、悲惨な光景である。
私がここで述べたいのは船に乗り込んでいる日本人の現地ツアースタッフである。女性を中心に若者6~7人が添乗している。いわゆる日本人ツアーに付き添っているスタッフではなく、この船を運営しているツアー会社のアテンダントである。彼女らの仕事は、往復の船内のアテンダント、リーフに着けばダイビングのインストラクターである。出港、入港時には舫(もやい)の取り扱いまでしていたから、まさに船の乗組員といってもよい存在だ。
この日本人スタッフの働きがなんともすばらしい。立っていられないほど揺れている船の中で、酔い止めの薬を配る、口に含ませ清涼感を与えるために氷を配る。汚物が床にこぼれれば、すぐに衛生用手袋を着用し、液体を使い消毒処理をする。気分の悪い人には席の移動を指示する。励ます。先ほどの子どもなど、親もどうにも動けずにいるので、彼女らが着衣を脱がし、体を拭き、タオルで包み、励ましながらの移動である。実にてきぱきと動き、指示を出し、処置をする。その行動は見事なものだ。
私は動揺する船の中で、その彼女らに話しかけた。オーストラリアの魅力、なぜここに来てこういう仕事に就いたのかなど聞いてみた。ワーキングホリデーで来て働いている人もいれば、この地に魅せられて移り住んだ人もいるという。彼女らの生活は決して楽ではないともいう。でも、ここが好きだから、この仕事が好きだからと私に語った。
私も最後に申し上げた。「あなたたちの働きは本当にすばらしい。この船とツアーが運営できるのは、あなたたちがいるからこそだ。日本から遠いこの地にあなたたちがいらっしゃることに、同じ日本人として誇りに思う。」と。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )