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2008 年 6 月 29 日

本当ですか?

 コミュニケーションに関する教育、研究、コンサルティングをしているので、ときに研修先の方から質問を受ける。言葉づかいについての質問が最も多い。ある職場で、若い人の言葉づかいが気になるという質問が寄せられた。

 上司や先輩、部外のお客さまにも、一部の社員が「本当ですか?」と頻繁にあいづちを返すという。なかば口癖のような状態だというが、上役としては不自然に聞こえて快くない、ましてやお客さまには失礼ではないか、というのである。
 確かに、若い人を中心に何かというと「本当ですか?」などと返す人がいる。若者同士、学生などの友達同士の会話「本当っすか?」なら笑って許せる。が、社会人として上司やお客さま相手にとなると、手放しで容認するわけにもいかない。
 
 「本当ですか?」という言葉は、確認、感嘆の意味でつかわれることが多い。では、この言葉を多用する人が、相手方の発言にいちいち確認、感嘆しているのかというと、そうでもなさそうだ。このようなケースでは、相手の話を受付て少しだけ“より確かに”“より深く”受け付けましたよ、という感覚で、会話に多少の抑揚を持たせ、話を盛り上げる意味でつかっているようなのだ。

 同じような言葉で「うそ」がある。いうまでもなく相手の話を否定する言葉である。これも情況によって、心の底から否定しているわけではない。相手の話に対し、軽い驚きをもたせて深く受け付けたというニュアンスでつかっている。かつて芸能界で大御所といわれるほどの女優がこの言葉を多用して、品性に欠けると批判されたことがあるが、いつの間にか一般化している。私など女性から、「ウソーぉ」などと言われると、かえってかわいらしい印象を感じることもある。私が中年男性だからということだろうか。

 どのような言葉が好ましいかについては、通達性と感化性の二つの面から考える必要がある。つまり、話の意図が確実かつ感じよく伝わってこそ、好ましいのである。また、情況言語の観点から考えると、職場の雰囲気から、反対にどのような雰囲気の職場にしたいのかということから、言葉づかいのあり方も考えなければならないだろう。

 では、「本当ですか?」はどうか。話の内容や相手方の意思などを確認したい意味が強ければ、この言葉をつかうことも妥当性がある。驚きの意味でも、話の内容によって、滅多にないことで驚くほど意味のことであればよいだろう。もちろん接客などの情況によっては「左様でございますか?」「本当に、そのようなことがあったのですか?」など、多少ていねいな言い回しが好ましいかもしれない。
 地位や立場、年齢的な自負、話の内容、人間関係の情況によっては、そう感嘆に確認されたり驚かれたりしてはたまらない、失礼だという情況も考えられる。相手方に“私がウソを言っているっていうのか”“あなたにそこまで驚いて欲しくはないよ”つまり、“もう少し素直に受けたらどう?”という反発を与えるということだ。こうなると、感化性の面からはあまり好ましい情況ではない。

 特に接客においては、言葉や表現は硬い方向、ていねいな方向に傾けたほうが妥当という原則もある。職場でよく話し合い、誤解されないような言葉づかいに心がける共通認識を作り上げてほしい。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )