2009 年 3 月 14 日
地球が静止する日
同名の映画を見た。映画のストーリーは、宇宙人らしき者が地球温暖化を憂いて、人類と人類が造ったものをすべて破壊、無にして地球環境を立て直そうともくろむものだ。そこに立ちはだかる、というわけでもないが、女性科学者が主役。人間は変われる、だから止めてほしいと宇宙人らしき者に懇願し、わが子を守りたいという親子の愛に宇宙人らしきものがほだされ、宇宙に帰っていくという単純なもの。人類がよほど意識を変えないと地球環境を守れない、と言うメッセージが込められている。映画そのものには、私はさほどの感動も覚えず、CGもまあこんなものかなというレベル。作品としてはお勧めしない。
しかし、この映画、ストーリーの本質となる環境意識啓発としてのコンセプトは評価する。人類は産業革命以前には、今日のように大量のCO2を発生させていない。その濃度はこの150年ほどで、約280ppmから300ppm台の後半にもなっている。地球温暖化の原因がCO2であることが正しいとすれば、閾値は600ppmだとする説がある。大気に放出されたCO2は保存されるので、累積的に濃度は上がる。もし、今、人類がすべて死滅して、CO2をまったく出さなくなっても、280ppmには戻らない。仮に戻るとしてもおそらく150年の数倍から数十倍はかかるだろう。つまり、地球環境破壊を止め、これを元に戻すには、人類とその創造物をすべて無にし、時間をかけるしかない。
宇宙人らしき者たちは、地球環境に対する人類の意識が変わらないので、地球上の動植物のサンプル(DNA)を一旦地球から出し、すべてをクリアにして環境が戻ったら、それらを使って元に戻そうということをもくろんでいた。理屈は正しい。
では、人類がこのまま生き延びて、地球環境を守るにはどうしたらよいのか、この映画では「人類は変われる」と女性科学者が宣言し、宇宙人らしき者がそれを信じるということで終わっている。現実の社会でも人類は何の解決策も出してはいない。意識が変わるといってもどう変わればいいのか。
現実の日本はどうか。前の首相が提唱した排出権取引の問題も、企業も政府も熱心とは言いがたい。ほとんど進んでいないといってもよいだろう。高速道路を乗用車とバイクのみ休日を1000円にする。その周囲の観光地やガソリンスタンドでは、人の誘致と称してあの手この手の割引をするという。割引などしなくても、魅力と価値のあるところには人は集まる。高速道路上の渋滞予想は現状の30~40%増しだという。テレビニュースのインタビューでは、会社員らしき人が「これからは家族で遠出ができます」などと嬉しそうに言っている。まるで狂想曲である。
埼玉県のある市が、地球温暖化を地球高温化と言い換えるという。そういう行政体も出てきたが、生半可な意識改革のレベルでは、環境は何も変わらない。さらに、意識は政策、行動にならないと意味がないのだが。
果たして人類の意識は変わるだろうか。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )