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ブログ

2009 年 4 月 26 日

上海にて(その2)

 上海の直感的な印象がもう一つある。とにかく街全体がうるさいのだ。深夜も含めて一日中、街中は車とバイクのクラクションが絶えない。朝から夜の人の活動時間帯は、どこを歩いていても前後左右、プープー、ブーブークラクションだらけだ。

 例えば、横断歩道である。横断歩道では、道路を渡る歩行者が優先。日本では当然だろう。この地ではそうはいかない。たとえこちらの信号が青であっても、ずうずうしいほうが優先だ。中国にも交通ルールはあるというが、行けるとなれば車もバイクも人も、赤信号でも突っ込んでくるし、事実上は車やバイクはクラクションを鳴らして人を蹴散らす。人も人で、気の強い?要領のよい?歩行者は、上手くその間をすり抜ける。お互いに悪意はまったくないのだ、危ないよとの警告でクラクションを鳴らす。鳴らされたほうも特にムッとすることなく、空きあれば前進あるのみというわけだ。

 うるさいといえば、人の声もそうだ。街中で人と人とが会話している声も、怒鳴りあっているかのような印象を受ける。必死に何かを伝えたい姿勢、喜怒哀楽が素直なのだと考えると微笑ましいが、慣れるまではけんかをしているのではないかと不安になる。

 テレビ塔(東方明珠)に入ろうと、チケットを買うブースに近寄ったときだ。決して身なりが良いとはいえない何人かの男が、その手前から大声を出して寄ってきた。この人たちの形相は微笑みなどというものではない。叱りつけているように、必死に何かを訴えているのだが、こちらは中国語がわからない。何も悪いことをしていないのだが、何をしている、ダメじゃないか」と抗議されている雰囲気だ。

 現地の人に聞くと「一人、120~130元の入場料を100元にするから俺について来い」と言っているのだという。安くなるのに、何故俺の言うことを聞かないのだ、くらいのノリなのだろう。それが、テレビ塔の入り口前から、我々がチケットを買うまで、チケットブースの手前にはフェンスがあるのだが、それによじ登って、こちらを見据えて大声で怒鳴っているのだ。結構な迫力だ。

 このおじさんたちが、観光客の入場料をなぜ安くできるのか、何とも胡散臭い話だ。これも解説を受けた。このノリで、入場者を20名集めると団体扱いになり、このおじさんはそれでチケットを買うと一人80元ほどになるらしいのだ。つまり、一人当たり20元のマージンが儲かるということらしい。では、ということでこの人についていくと、少し離れた空き地に連れて行かれ、そこで20人が揃うまで待たされるらしく、いつ20人になるかは分からないわけで、それはそれで忍耐が必要らしい。するとあの怒鳴り声は、すでに待っている人たちへの、彼らの誠意であり営業努力というところだろうか。

 車やバイクのクラクション、人の怒鳴るような声、これらの“隙あらば”の精神は、マナーが悪いといえばそれまでのことだ。中国が国際的により理解されるために考えなければならない一つの側面かもしれない。
 しかし、彼らが必死に生きようとする姿勢と考えると、どこか懐かしい気がする。前回にも書いたが、どこか昭和30年代の日本に重なる気がするのだ。豊かな国になった日本であれば、そこまでしなくても、という感覚が先立つ。しかし、もっと必死に、もっと貪欲に、もっと真剣に生きてみよう。時代によらず、場所によらず、私の生き方はどうなのだろうという、大いに反省にもなったものだ。
 上海万歳。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )