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2009 年 5 月 17 日

インサイト

 ハイブリッドシステムを搭載した自動車、本田のインサイトが、2009年4月単月で販売台数トップになったことがニュースになった。ハイブリッド車が販売台数で1位になるのは初めてだという。
 ハイブリッド車では、トヨタのプリウスが世界で初めて売り出されてからは、ほぼそれが代名詞のような印象があったが、今回のインサイトの売れ行きは、プリウス=ハイブリッドのイメージを変えるほどの感があり、販売は好調そのものといってもよいという。

 インサイトの売れ行き好調の理由は、これまでのプリウスの価格を大きく下回る、
189万円であることがマスコミの大方の意見だ。確かにこれまでのハイブリッド車は、プリウスが200万円台中半の価格設定、トヨタにはそれ以外の車種にもハイブリッドシステム搭載の設定があるが、それぞれがもともと高級車種であり、ガソリン車種プラス数十万円程度ということになるとそれなりの高額になる。インサイトの189万円は、ハイブリッド車としてはかなり格安といえるし、トヨタのカローラや日産のティーダなどの普及価格帯の車種とも競合し、自動車全体の価格としても買いやすいだろう。

 正確にいうと、インサイトとプリウスでは、ハイブリッドのシステムが違う。出力もインサイトのほうが小さい。だから単純に比較するわけにはいかない。また、今回のインサイトは2代目であり、初代は2人乗りだったので購入者層も限られていて、あまり売れなかったという背景はある。しかし、今回は普通のガソリン車を考えていた人も、これならハイブリッド車を買おうという気持ちになるだろう。

 しかし、今回のこの項での私の主張は、インサイトの好調の理由は価格だけではないのではないかと思うことである。
 インサイトを購入している人の多くは40歳代、50歳代だという。もっと高い価格帯の自動車を買えるはずの熟年層が購入しているのだ。
 その理由は、あのスタイルにある。要するにカッコイイのだ。
 私は昭和30年生まれだ。この前後の時代の、当時少年だった者の車への憧れのイメージに近いのだ。例えば、マツダの初代ルーチェ、いすゞの117クーペ、日産のフェアレディZ、スカイライン、トヨタの2000GT、セリカなど、とにかくカッコイイと思った。憧れた。近所に駐車していようものなら、中をのぞき、外観を眺め、時間を忘れて見入ったものだ。子どもだから当然に免許はない。大人になったらこういう車に乗りたいと思った。カッコイイ車は、今も心の宝物なのだ。

 社会に出て、トヨタのセリカを買った。次に、夢と憧れの象徴としてのターボ車、三菱のスタリオンを買った。いずれも中古、格安の事故車である。
 子どもができて、さすがにスタリオンというわけにもいかず、日産のセフィーロを買った。初めての新車である。直列6気筒のスムーズな走りは乗っていて楽しかった。ワイドトレッド、車高の低いスポーティセダンは、そのスタイルは何時間見ていても飽きなかった。特にスタイルは時を追って惚れ込んでいった。新車登録から21年、この車はマンションの駐車場に、私へのオーラをますます強く放ってある。

 昨今の自動車は、多くの車種で車としてのすばらしさがある。天井が高く、室内も広い。開放感があり、エンジンもV6が主流、走りもパワフル、スタイルも斬新、開口部が広く乗り降りしやすい。使い勝手や工業デザイン的センスは、かつてのものはとてもかなわないだろう。
 多くの車種が3ナンバーになった。で、それなりの価格なら、すばらしくて当たり前。だいいち、3ナンバーなんて贅沢な印象がぬぐえない。そういう意味でも、最近の車には、私たちの年代にとってのあの日の憧れ、ときめきがない。
 実用性では多少の我慢はする。運転席に座った感じが開放的でなくても、計器、スイッチ類に囲まれている満足感が欲しい。外観を見ただけで乗ってみたいと思うそのカッコよさが欲しいのだ。

 久々にそれを感じさせてくれた5ナンバーのインサイト、それが販売好調の隠れた理由に思える。
 車への憧れを少年時代から引きずっている、私の雑感である。

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代表

関根健夫( 昭和30年生 )