2009 年 6 月 29 日
エコポイント
エコポイント制度が始まった。省エネ効果の高い冷蔵庫、テレビ、エアコンを買うとエコポイントがもらえる制度だ。さらに古い機種を下取りに出すと、ポイントが割り増しになるという。ポイントはエコ商品に交換できるらしいのだが、商品券等の金券にも交換できるというから、そちらにいく人が多いかもしれない。
私は自宅の自分の部屋では、テレビをパソコンで見ている。しかし、そのパソコンも古くなり最近は冷却ファンがカタカタ鳴るし、これがアナログ放送受信タイプであるので、あと2年もすればアナログ放送終了と同時に見られなくなる。では、来年の3月までのこのチャンスに、自分の部屋のテレビを買い換えようかと思う。確かに、良いチャンスではあるので、私もこの制度を利用しようと思っている。
しかしながら、手放しで喜んでもいられない。そもそも、エコポイントとは何のために行うのだろうか。省エネに対する意識を高め、省エネタイプの機器の普及を促し、結果としてエネルギー消費量を減らすことにあるのだろう。
現実はどうか。電気店の店頭でも、省エネ性の高いものほどエコポイントが多く付くようだが、それらは高効率であると同時に、往々にして高機能、高額機種、大型機種である。となれば、ほとんどの人はテレビでも冷蔵庫でも、現在使用中の機器より大きいものを選ぶだろう。結果、多少エネルギー効率のよい機種であっても、消費電力はその人がもともと使用していたものとほとんど変わらないだろう。
冷蔵庫は、より大きなものを買うと、例えば中に入る冷凍食品なども増えるはずだ。極端に言えば、冷凍室がなければ毎日スーパーに行ってその日に消費するものだけを買うことになる。しかし、大きな冷凍室があればまとめて買うだろうし、ほぼその容量に見合った食品をストックすることになるだろう。家庭内で選択の楽しみができるからである。確かに生活は豊かになったように見えるが、家庭内の食品ストックに要する電力は増える。正確にいうと、増えるのではなく削減しにくくなるのだ。この際だからと大きなものを買い、冷水機や自動製氷機、急速冷凍装置などがつくタイプなど選ぼうものなら、消費電力がそう変わるとは思えない。
テレビでも、14型クラスの古いテレビを40型クラスのハイビジョンに買い換えたところで、消費電力はほとんど変わらないどことか、かえって増えるケースもある。
エコの概念には、がまんという概念が必要不可欠である。今の生活を維持して、地球環境を保護することは不可能である。より大きく、より快適に、を容認すれば、人はますます我慢しなくなる。思考の幅を拡げながらも、生活を拡げないこと、行動をコンパクトにすることこそが大切だ。
本気でエコポイントを付けるなら、効率のよい機器に高いポイントを付加するのではなく、消費電力の絶対量が少ないより小さい機器に買い替えた人にこそ高ポイントをつけるべきであろう。効率ではなく消費エネルギーの総量の視点に立つべきだ。
ポイントの交換特典も、商品券などとはいわず、本当の意味で環境を改善できるものにこそ使うべきである。森林伐採を余儀なくされている人々が、それをしないで生きていけるよう、発展途上国の援助に使う手段もあるだろう。それなら、私たちは損得ではなく、より誇りをもって機器を買い換えよう。
国民が政策を評価することは大切だが、政策が国民の意識を変えることもまた事実だろう。中途半端な意味でエコなどというから、国民の意識は必ずしも本来のエコロジーに向いていかないのだ。政策の意味がエコではなく、景気対策か実は選挙の評判取りかよく分からないことになってしまうのである。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )