TOP 1つ戻る

ブログ

2010 年 8 月 12 日

電力供給に思う

 今年の夏は特に暑いと感じるのは私だけではないだろう。気象情報によると、猛暑日の日数や各地での最高気温のデータが塗り変わっているという。気温が35度に近づくと、アスファルトの道路上に吹いてくる風は、まさに熱風の感覚だ。
 これだけ暑いと日中のエアコンの使用も増える。家庭の冷蔵庫や街角の飲み物の自動販売機などもフル稼働だろう。そこで大いに気になるのが電力供給だ。

 電気は基本的に貯めることができないことは周知のとおりである。電気は夏の特に暑い時期の日中13時から14時に最も多くが使われる。これを夏ピークという。その時間には、消費分を同時に発電しなければならない。しかし、電気はどこでどのくらい使われるか分からないから、安定して供給するためには予備力、消費量に対してプラス8%程度を用意しなければならないという。夏ピークに対応するためには、揚水式発電所も投入して、電力会社の発電設備もフル稼働だ。
 反対に、冬の深夜には消費量が減る。発電所のいくつかは出力を調整したり、停止したりして供給量を合わせる。機械を止めての点検整備などもこの時期に行う。

 ここ数年前までは、日本の電力消費は増え続けた。結果として、夏ピーク時に電気の量が足りなくなる恐れが出てきた。電力会社は夏の省エネを訴えた。東京電力などは、電気が足りなくなる可能性をテレビで訴え、電気予報なるものを出し、特に暑い日の日中の電気の使用自粛をお願いした。
 大口の事業所には、電力会社の依頼で電力量を制限する契約を用意し、実際に行使した例もある。街角の自動販売機にも、午前中に飲み物を強く冷やしておき、午後に冷却機を止めるエコベンダーなるものを開発し、その導入に補助金を出すなどした。

 ところが、ここ2~3年、夏ピークを理由にした省エネが言われなくなった。電気の使用量が減ったのだろうか。東京でいえば、東京電力の電気の販売量は確かに減っているという。だから、発電設備には余裕ができた。
 しかし、実は電気の使用量はそれほど減ってはいない。電気事業自由化にともない、東京電力以外の新規参入した電力会社が、自社工場内などに発電設備を作り、他の企業に売っているのである。総体として発電設備が増えたのである。
 なんだ、省エネの影響ではないのか。

 おかげで、私たち東京電力から電気を買っている者にとっては、夏でも気にせず電気を使えるようになった。ありがたいことだ。しかし、総体として設備の増加は、環境的にはよくない。CO2は確実に増える。
 多少の不便や心配を感じながらも、社会全体のために夏ピークを意識し、省エネした時代が懐かしい。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )