2011 年 7 月 14 日
数十年先の脅威 - エアコン依存
今年の梅雨明けは、全国的に平年より2週間ほど早かったようだ。今年は電力不足が懸念され、猛暑といわれた去年の記憶がよみがえる。この先どうなるのか、漠然とした不安が社会を覆っているようだ。
そこに「熱中症」なる言葉が、ここ数年流行のようにつかわれることになった。「暑さで命を落とす老人が後を絶たない」「若い人でも危険」などと報道されると、さらに不安を増幅させられる。最近は夜通しエアコンを運転する家庭もあるようだ。マスコミの論調の中には、それを奨励するかのようなものもある。
熱中症とは何か。私は医学の専門家ではないが、要するに高温の環境、一般的には気温が高い状態に置かれることで、体温が上昇し調節できなくなるということらしい。軽い症状であれば気力、体力の減退、めまい、中程度なら自律神経の失調、深刻な事態であれば死にいたるケースもあるという。
熱中症は高齢者に多いという。なぜか。高齢者は体温の調節ができにくい。そもそも、気温の上下を感じにくいのだそうだ。暑さを感じないからその環境に留まる。だから熱中症の危険度が上がる、ということらしい。
一方、若い人も症状が出る可能性がある。6月に東京のある高校で、体育祭の最中に生徒十数人が倒れ、救急車が出動する事態になった。全員が軽症だったようだが、これがNHKの7時のニュースのトップを飾ったことは記憶に新しい。私はニュースを見ながら、平和な社会だなと感じていた。
老人でなくても熱中症にかかる、その原因の一つは、現代人が汗をかくことが少なくなったからだという。暑いときにかく汗は、放熱により体温の調節機能が働いていることを意味する。汗をかかなければ熱は体内にたまり、体温は上がる。
では、なぜ現代人は汗をかかなくなったのか。それは、汗をかく体の機能を使わなくなったからなのだそうだ。原因はエアコンである。家、電車、車、勤務先、買い物をするスーパー、デパートなど、私たちが利用する施設では、ほぼすべての場所でエアコンが効いている。従って、多少の暑さはあっても汗をかくことが少なくなった。また、現代人は、かつてほど体、特に筋肉を使わない。余程の運動をしない限り、日常生活では汗をかいても胸や腋の下が中心であり、足や腕の筋肉に近いところでは汗をかくことが少なくなったのだ。このことが体温調節機能を弱めて、体調不良の原因になるのだという。
体温調節機能が弱まった現代人に、マスコミが「熱中症に注意しましょう」などと宣伝するから、またエアコンを使う。これでは本質的な問題は、いつまでたっても解決しない。
もっとおそろしいことは、今の大人の体質が変わるほどの環境だから、そういう環境で育ちつつある子どもたちである。今の子どもは、高温多湿への耐性がより弱い大人になることである。さらに、この子どもたちが数十年先に老人になったとき、今の老人よりも確実に熱中症への耐性が損なわれるだろう。数十年先に起きる脅威である。
以前、別の項目でも述べたが、我が娘は幼児期にアトピー性の皮膚疾患があった。当初は、汗をかかせてはいけないからとエアコンを入れた時期もあったが、結局はエアコンを止めて汗をかかせ、徹底して清拭したことで見事に完治した。
以来、我が娘も我が家族もエアコンへの依存は少ないと自負する。エアコンが嫌いというよりも、それがなくても何ともないのだ。もちろん水分補給は十分にする。夏に快適に過ごしたいと思ったら、電力消費のピークを過ぎた午後6時以降にエアコンを入れる。食事を美味しく食べるためだ。昨秋に買い換えた我が家のプラズマクラスターイオン発生装置付き200ボルト仕様のエアコンは、今夏7月10日現在、冷房としては一度も使ってはいない。
そもそも、私どもの親の時代、昭和40年代までは、一般家庭にはエアコンそのものがないのが普通だった。それでも熱中症にかかる人は少なかった。電力不足が騒がれる昨今であるが、やがて石油もウランも枯渇する。石炭を燃やせばCO2が出る。
「暑いからエアコン」この考えと生活パターンを変えること、エアコンに頼らない生活をすること、そのために大人も我慢することが子ども将来のためになる。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )