2011 年 12 月 15 日
一番美味しいものは何ですか その2 - 秋田県秋田市
「全国で一番美味しいものはなんですか」と聞かれて、嬉しくもありながら困ってしまうということを前回に書いた。とにかく私は食べることが好きである。食べてみて、美味しくないものはない。たとえ、美味しくないと思うことがあっても、この店にはもう来ないぞ、などとはあまり思わないようにしている。どの店の店主も、不味いものを出そうという意図はないはずだからだ。それは、努力不足、センス不足ということだろうと思う。だから、それなりに美味しけれど、もっと他に美味しいものがあるかもしれないから、他を探そうと思うようにしている。
全国あちこちを旅する者として、これは興味深くありがたいことだと思う。そういう意味で、他を探そうとは思わないほど美味しい、この店の他にはないだろうと思う、そういうお店を「全国で一番美味しい」として紹介したい。
前回は島根県浜田市の豚肉料理店であった。今回は秋田県秋田市の居酒屋である。
屋号を「やどろく」という。居酒屋といえばそれまでだが、いわゆるチェーン店とはまったく違う。職場の同僚同士でも利用できるし、間違いなく接待にも利用できる店だ。それは店がきれいで上品だからではない。秋田の郷土料理に特段にこだわっているわけではなさそうだ。それでも接待に使えそうだというにはもちろん理由がある。初めて行った人は多くの人がその料理に感激するだろう、そういう店だからである。
この店を切り盛りするのは、ご主人が元ラガーマン、名門新日鉄釜石のメンバーだったというHさんとその奥様だ。年齢は私と同じくらいか。ご主人は、元ラガーマンだけあって体がデカイ。髪型、ひげ、森の熊さんといった雰囲気に圧倒されるが、とにかくいい人だ。
カウンターと小上がりで席数は30ほどだろうか。これをお二人で切り盛りするのだから、ピーク時はこちらが気をつかうほどのてんてこ舞いだ。時々、お手伝いの方がもう一人いるが、それでも忙しい。
座ると料理が順に出てくる。ご主人がその日に仕入れたものが出るので、客には何が出るかは分からない。メニューもあるが、それを見てオーダーする客はまずいない。
多くの客は最初から驚く。その量が通常の居酒屋さんで想像する倍くらいだ。「おう、たくさん出るな!」と嬉しいのだ。枝豆など枝つきで山盛りだ。
しかもネタの質がいい。例えば、刺身の盛り合わせ。すばらしい中トロのネタが厚み1センチくらいで、しかも1人4~5枚当てで出されると、幸せな気分になる。盛り合わせだから、同じ皿には白身の魚やイカ、時にはうになどが乗っていて、それだけで卒倒しそうだ。
例えば、ステーキなどもやわらかい霜降り肉が「これ1人で!」というほど大きさで、感激させてくれる。さらに、例えば大きな金目鯛の煮付けが1人1匹。などなど。終盤に自家製のおしんこが山盛り出るころには、もうギブアップというところか。
私はかつてこの店で、1匹が30センチもあろうかという、特大はたはたの焼き物を、しかも1人2匹出されたことが忘れられない。秋田名物としてみやげ物店で売っているものは小さいので、ハタハタとはそういうものだと思っていた。生きのいい魚は小さくても旨いが、大きいと大味になる気がする。ハタハタについては大きいのはさらに旨い。忘れられない一品である。
飲み物もビール、焼酎、日本酒、何でも頼めばよい。予算は一律5000円だ。飲みすぎると奥さんから、もうおしまいとのサインが出る。そこから先は有料だ。以前よりサインが早めに出るようだが、気のせいか。いや、飲みすぎか。
この店、秋田の人でも知らない人、うわさで聞いているが行ったことがないという人が多い。地元の方を何人もお連れしたが、皆、喜んでくれた。当社の女性社員も出張の折に連れて行ったが、その後、あまりお酒を飲まない人なのに、女性同士でもう一度行ったという。よほど気に入ってくれたのだろう。
素材のよさ、味、量、予算、このバランス他にはないだろうと思えるお店である。秋田市役所の裏手の町の一角にある。目立たないので調べて行くこと、ほぼ連日満席になるので予約を入れることをお勧めする。
秋田に何度も行って、飽きた人でもここはお勧め。
お後がよろしいようで‥‥‥。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )