TOP 1つ戻る

ブログ

2012 年 7 月 26 日

この先の日本が心配です その2 - 50年後の日本

 私は、エネルギー問題については基本的に素人である。しかし、以前より相当な興味をもっており、思うことを講演などでも述べてきた。その立場をもって著してもきた。
 東日本大震災以来、原子力発電が危ない、怖い、不安だなどと、その未来が感情的に語られ、インターネットで煽られた人々がデモに参加する光景を見るにつけ、この先の日本が本当に心配になる。
 以下、私の杞憂の一部を紹介する。

■ 原子力発電
 わが国は54基ある原子力発電プラントが6月10日時点ですべて止まっている。(福島第一発電所の4基は、すでに廃炉となったので正確には50基である)7月に入り一部に再稼動したプラントもあるものの、今後、国民的議論で社会の理解が得られずに50年後の2060年ごろに、わが国のすべての原子力発電所が廃止されたと仮定すると、果たして日本のエネルギーは足りるか。

■ エネルギー争奪
 石油、石炭、天然ガスは、中国、インド、アフリカ諸国などの台頭で需要が急増するだろう。一方で、中東の原油は徐々に生産量が減ってくる。原油価格は1バレル250ドルを突破しているだろう。しかも、国際的に、化石エネルギーの争奪戦が激しくなっているだろう。
 自前のエネルギーを持たず、原子力もゼロ、エネルギーを輸入に頼るしかない、産業も空洞化して魅力のなくなった日本は、その購入については相当に足元を見られ、不利な条件での交渉になるだろう。十分な量の確保はまず無理と考えるほうが自然だろう。
 アメリカが開発していたシュールガスは、期待したほど産出しないようだ。エネルギー需給に大きな効果はないのではないか。しかも、シュールガス産出については、2012年度時点で中国の権益が日本を大きく引き離しているという。結果、これも日本には十分に回ってこないだろう。

■ 他国の原子力
 2012年以降、中国やインド、中東、南米などは、原子力発電を推進しているだろう。中国はこの時点で、原子炉の新設計画が90基以上あるという。50年後にはそれらが東シナ海沿岸にずらりと並んでいる。軽水炉から、新型炉、高速増殖炉などへの移行も進んでいるだろう。そして、この技術を輸出して外貨を稼いでいるかもしれない。
 もし、東シナ海に並んだ原子力発電所が、一つでも事故を起こせば、放射能を含んだ塵が日本に流れてくる可能性がある。今、日本が原子力技術を放棄すれば、事故の対策、収拾に対しては何の手段も講じることができなくなる。

■ 新エネルギー
 2012年時点で、原子力に反対する人々が、風力、太陽光で発電すれば良いではないかと主張している。が、わが国では国土の地形的不利もあり、風力、太陽光などのエネルギーは、50年後も夢のような安定した発電ができているとは思えない。電気は安定して供給されず、計画停電を繰り返している可能性がある。
 しかも、この分野での事業そのものは中国や他国の資本に握られている可能性もある。現に2012年時点で、旧三洋電気の技術は中国企業に移転しているし、シャープの液晶事業は資本の半分以上が台湾企業に買収されている。
 また、風力、太陽光発電設備を大量に作っても、そのバックアップ電源が必要なことを知る人は少ない。不安定な電源をバックアップしなければ、系統が不安定になり、大規模停電につながるのだ。もし、バックアップを火力に頼れば、一般家庭の電気料金は今のレート換算で月に2000円以上は確実に高くなるだろう。2012年、東京電力の値上げに庶民は反対したが、それは標準的家庭で360円レベル。その比ではないだろう。

■ 出稼ぎ
 少子高齢化は、ますます進み、日本はエネルギーの供給不安定さ、高価格が災いして、産業は空洞化が進む。雇用はますます減る。若者は概ね海外に行かなければ働き口がなくなるだろう。しかも、海外に行った人々は、安い賃金で働くことを余儀なくされ、本国の両親に送金するのも大変な状態になる。それでも就職しないよりはマシと、多くの若者が海外に出かけるかもしれない。
 2012年、東南アジアから留学や研修を理由に人を呼び、現実には安い賃金で労働させている、今の日本の立場が逆転したようなものだ。

■ 世界情勢
 エネルギー不均衡によって、もし中近東、米中、南北韓国の情勢が不安定になり、船で石油やLNG(液化天然ガス)を運ぶことができなくなったらどうなるだろう。
 2012年、ロシアからサハリンを経由して北海道に延ばすパイプラインの計画は、ロシアの一方的な理由で断られている。ロシアが、将来的な日本のエネルギーの枯渇を見越して、長期的に揺さぶりをかけているのではないか。考えすぎだろうか。

 エネルギー問題は、怖い、不安で議論してはいけない。資源がまったくない国の国民としては、どのようなリスクに備えるべきか、覚悟をもって真剣に考えなければならない。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )