2012 年 8 月 31 日
脳に悪いこと - ゆとり
この世に生まれた以上、誰でもよい生活をしたいと思う。転じて人生を豊かに生きたいと思うだろう。しかし、すべてが自分の思うようになるわけではない。つらいこともあるし、努力しなければならないこともある。
現実には、同じような境遇でストレスを感じながらも、なおもがんばれる人がいる。反対に、なぜ自分だけがこんなに忙しいのかと、不満を持つ人もいる。どのような状況でも明るくがんばれる人もいるし、恨みを持つ人もいる。豊かな気持ちをもち周囲に協力者が多い人もいれば、不満を述べて周囲に距離を置かれる人もいるものだ。その違いはなんだろうと考えていた。
「脳に悪い7つの習慣」という本を読んだ。元日本大学医学部教授の脳外科医、林成之氏が著わしたものだ。人間の脳を研究し、救命救急センターで実績を上げてきた氏が、人間がその能力を発揮し、幸せになるための考え方を、脳神経の専門家の立場から提言する。
以下は、この本の正確な抜粋ではない。私がこの本で裏付けられた(気がする)、常日頃から思っていたことの一部を表したものである。
その一つは、ゆとりは必ずしも人を幸にしないということだ。
人は、ゴールを意識すると手を抜くという。オリンピックの選手も、あと少しでゴールだと思った瞬間、自分では一所懸命にやっているつもりでも脳が安心してしまい、わずかな記録に表れるのだそうだ。
仕事は追い詰められた状態でこそ、突破する力が出る。人間誰でもその能力は130%程度まで瞬発できるという。
ゆとりをもって仕事をするということは、ゴールが見えていることを意味する。万が一のことを考えて、余裕度を見ているから早めに終わる。失敗がない。それは一見よさそうだが、必死、悲壮になって自分の限界を超え、時には自分を失うほどの体験をすることがないから、そういう仕事の仕方をしていても脳の能力は上がらない。
だいいち、失敗したらまずいといった不安の裏返しが、ゆとりある仕事の仕方になるのだから、常に気持ちの深層には不安というネガティブなイメージがある。指示されたことをコツコツと行い、失敗しないことは脳のレスポンスを悪化させるのだ。
私的な感想だが、コツコツとマイペース、仕事は完璧にこなすが余計なことをしない。こういう人には、人生に大きな成功者はいない気がする。
私が一目置くのは、ゆとりのあるときには何にでも手を出す人だ。あれもやってみよう、これもやってみようと何でもやってみる。結果として暇はなくなり、いつでも忙しそうにしている。結果として本来やるべきことにしわ寄せが来るが、いよいよゆとりがなくなると、それを必死に行う。瞬発力を発揮するという脳の能力アップにつながる。
時には失敗するが、それはそれでよい。自分の生を余裕のないほど使って生きてきた結果だ。だから人には、謝るということが神様から与えられている。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )