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ブログ

2014 年 2 月 3 日

お言葉でございますが その4 - 全然大丈夫

 昨年末だったか、日本人宇宙飛行士が、国際宇宙ステーション内でロボットと会話したというニュース映像をテレビで見た。W飛行士がロボットに向かって日本語で話しかけ、ロボットがその内容を聞いて答えるというシーンである。
 「○○(ロボットの名前)君、宇宙には慣れたかい?」との質問に、ロボットは「うん、全然大丈夫」と答えた。
 ニュースでは、その後の一言二言の会話を流していたが、私はこの初めのやり取りで違和感を覚え、白けていた。

 「全然」という言葉は、その後の発言が否定的であることに伴ってつかわれる副詞である。したがって「全然ダメ」「全然できない」などとつかう言葉なのだ。最近では「全然問題ない」という意味で「全然大丈夫」などという人が多い。質問が「大変だろう」「慣れていないだろう」という概念を含んでいるので、ロボットが「そんなことはないよ」という意味で否定しているわけで。言い方は肯定的であっても、ある概念を否定しているのでつかっているようだ。
 しかし、その意味でも「大丈夫です。心配は全然いりません」などと用いるべきであり後に付く言葉は否定形であるのが正しいのだ。「全然大丈夫」は明らかに間違いだ。
 そもそも「慣れたかい?」に対して「大丈夫」はおかしい。「はい、慣れました」と答えるべきである。

 このロボットは、東京大学が開発したものだそうだが、このロボットのポイントは、手足などの動きの部分ではなく、最先端の言語認識システム(プログラム)を持った人工知能というべき作品だという。
 人工知能といっても、プログラムされた日本語は誰かが組み込んだものに違いない。東京大学でこれを開発したスタッフが、間違った言葉づかいを組み込んだに違いないのである。正しい日本語を組み込めば、ロボットにも言葉を正しく訂正する能力を持たせることができる。私はロボットのことやシステムのことについて詳しくない。
 しかし、ロボットや人工知能、はたまたパソコンやスマートフォンまで、正しい言葉づかいをプログラムすることは基本中の基本である。

 私はかつて「日常茶飯事」を、ふざけて「にちじょうちゃはんじ」と読んで、人生の先輩から「違いますよ」と指摘されたことがある。「流石」を「りゅうせき」「ながれいし」などとふざけた時は、周囲の人にはしゃれが伝わらなかったが。プログラムは、日常会話でふざけるのとはわけが違う。

 私には、このロボットのニュースがどの程度重要なのかは分からない。
 しかし、このトップのニュースになったくらいだからそれなりに価値のあることなのだろうが、実に拍子抜けしたものだ。
 ちなみに、私のパソコンに組み込まれているWordというソフトでも、「全然大丈夫」と変換すると警告のアンダーラインが入る。どうやらこのパソコンは、あのロボットよりは物知りのようだ。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )