2014 年 6 月 11 日
82円の収入印紙 - 役所のお仕事
ある役所から、ある通知を受け取った。通知の文面の一部に、この通知の原因者はそちらであるから、送料82円を負担するようにと書いてある。私の受け取った通知の原因者は確かに私である。税金の督促状などでも納税者に督促料金を負担させる。(この通知は督促状ではないが、書類の送付費用はその原因者の負担であることの常識は私も持ち合わせている)今回の場合、送料は役所の経費の範疇でもいいのではないか、と個人的には思っているが、その点はまあ納得して82円を支払うことにした。
通知には、当所に来て、現金で支払うように示されていたが、82円のために数百円の交通費をかけて窓口まで行くのは現実にいかがなものか。そこでもう一つの方法として、はがきに82円の収入印紙を貼付して送っても良いという意味の記述があった。これなら郵送料が52円で済むので、この方法を採ることにした。
そこで一つの疑問である。82円の収入印紙があるのか。
私は不動産会社で印紙をずいぶん多く扱ったが、82円は見たことがない。私が今までに見たことのある収入印紙は、せいぜい100円から2万円までだ。インターネットで調べてみたところ、1円から10万円まで、31種類の額面があるという。ちなみに100円未満の収入印紙は、1円、2円、5円、10円、20円、30円、40円、50円、60円、80円があるらしい。
では、ということで、最寄りの郵便局に行ってみた。局員の反応は、
「えっ、82円の収入印紙ですか。郵便切手の間違いではありませんか。いや、私はそういう金額の収入印紙は見たことがないので、上司に聞いてきます。」
「やはり、ないようです。当局には100円ならあるのですが‥‥‥。本局にはあるかもしれませんが‥‥‥。でも、ないと思いますよ。」
で、本局に行ってみた。局員の反応は、
「えっ、82円の収入印紙ですか。郵便切手の間違いではありませんか。いや、私はそういう金額の収入印紙は見たことがないので、上司に聞いてきます。」
「やはり、ないようです。当局には100円ならあるのですが‥‥‥。税務署で問い合わせをされてみたらいかがでしょう。」
なるほど、それはそうだ。収入印紙は税金だから、税務署に行けばいいのだ。税務署に行ってみた。相談窓口の係員の反応は、
「収入印紙は税務署では販売していません。郵便局かコンビニでお願いします。」
こちらが、郵便局に行ったのだがなかったのでここへ来たこと、郵便局の本局でもなかったので、コンビニにはまずないだろうと思われる、と告げると、
「82円の収入印紙ですか。郵便切手の間違いではありませんか。そういう金額の収入印紙があるのかどうか‥‥‥。上司に聞いてきます。」
しばらく待たされて、
「上司に聞いたところ、確かに1円、2円などの収入印紙は存在するそうです。しかし、現実に流通していないとのことで、入手は困難のようです。」
ではどうしたら良いのかと聞くと、
「さあ、そう言われましても‥‥‥」
これが、国税を扱うある税務署の相談窓口の回答である。
国税の窓口で「現実に流通していない」という回答なのだから、これは手に入らないのではないかということで、原因の当該役所に電話をしてみた。
「そのようなことはありません。どこの郵便局でも取り寄せが効くはずです。ちなみに、東京中央郵便局にはあると聞いています。」
と係の人が言う。
私が「これだけ努力して郵便局の本局でも手に入らず、税務署の相談窓口でも現実に流通していないと言われる、そういうものを通知文に書いて提出を示唆しているということは現実離れしてはいませんか。」
「私は東京に住んでいるから、まだ持参するなどの可能性はありますが、地方に住んでいる方には相当に不便なのではありませんか。」
「書き方を変えるとか郵便切手で納めることを認めることを考えてはいかがですか。」「私以外にも、こういった問い合わせはないのですか。」と言うと、
係の人は、
「このようなご指摘は、実はよくあります。」
「でも、法律ですから。」とのつれない回答。
こうなるとこちらも引けない。社会勉強のつもりで東京中央郵便局まで行ってみた。
局員の反応は、
「えっ、82円の収入印紙ですか。郵便切手の間違いではありませんか。」
少したじろいだが、すぐに資料を調べ始め、どうやらそういう金種があることを確認してから、後方の上司に聞きに行った。その指示を得て、今度はさらに後方のカギのかかったキャビネットを開けて、
「ありました。私も初めて見ました。」
と言って、2円を1枚と40円を2枚、を渡してくれた。
以上、82円の印紙を手に入れるまでの、この日の約3時間の努力が報われた瞬間であった。
督促郵送料の納入については、郵便切手での納付を認めている役所も多いと聞く。
今回のこの役所ではだめらしいのだが、庶民にあまり実のない努力を強いている。
国税の窓口でも、東京中央郵便局の窓口でも、職員が知らないという収入印紙。
それを探し回る。
ほとんど生産性はない。
原因は、役所のお仕事である。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )