2014 年 9 月 29 日
日本は本当に先進国なのだろうか - エボラ出血熱報道に接して
前回のブログで、原子力発電のことを書いた。読者の中には、その内容に抵抗感のある方もおられたかもしれない。事実、私の友人、知人の中には、原子力反対を堂々と表明する人もいる。
原子力発電がなくても済むならば、私もそれはそのほうが良いと思っている。50年、100年のロングタームで考えるなら、代替エネルギーを確保するか、エネルギーを使わずに生きることを考えたほうが良いと思う。しかし、現実を考えれば、今ある原子力プラントの再稼働反対を叫ぶ、原子力発電そのものを即時廃止せよというのは、あまりにも無責任だ。
同じようなことを、新聞を読んでいて感じた。
アフリカでエボラ出血熱に感染する人が増えているという。報道によると、死者の数が1600人を超えたとも、毎日200人以上が亡くなっているとも、コンゴ民主共和国では死者がすでに2万人にも上るともある。どれが本当なのか分からない。いや、そういう発表があったという事実のレベルでは、どれも本当なのだろう。
エボラ出血熱は、治療のための薬品やワクチンがないという。人から人へ感染する不治の病という意味で、世界中の話題になっている。
レベルは違うが、日本でも最近、デング熱の国内感染が確認された。70年ぶりだという。過去70年間、国内感染者数がゼロだったのだが、ここ1カ月ほどで160人になったのだから、確かにニュースの価値はあるのだろう。幸いにも、この病気で死者は出ていないが、テレビのニュースでは、閉鎖された公園や殺虫剤の散布シーンを連日流した。ワイドショウでは、それほど感染症に詳しいとは思えないタレントが「怖い」「気持ち悪い」などと議論をしていた。
マスコミの報道はその事実を伝えてはいるが、それだけのことでしかない。このことが問題だといって、解決策を示そうとはしない。もちろん、彼らに解決策を示す義務はないし、解決策がないならば「ない」と報道することが正しいのである。
しかし、報に接する私たちは、結果的に「怖い」「気持ちが悪い」などと不安を募らせるばかりである。
そのような中で、気になる新聞記事があった。エボラ出血熱のような、危険度の高い病原体を研究する施設(BSL4施設というのだそうだ)が、日本には1か所もないというのである。ちなみに、世界には40か所以上あるという。
いや、そんなことはない。日本は先進国である。科学的に優秀な人材がそろっていて、技術的にも進んでいるはずだ。おかしい。
そう思って読み進めていたら。国が1981年、東村山市にBSL4施設を建設したのだという。しかし、施設はあっても、危険度の低い病原体しか扱うことができないのだそうだ。
なぜか。住民の反対により、である。
日本学術会議は、今年3月、我が国にもBSL4施設を複数個所、建設すべきとの提言をまとめたという。そして、すでにその候補地はあるのだという。
しかし、そこでも地域住民の反対があるという。そして、専門家の中には「BSL4施設は原子力発電所と同じだ」「専門家の言い分こそあやしい」などと、公言する人がいるという。何という低レベルな言い分、プライドの低さか。発言は自由だが、それを万人に分かるように証明して発言することが、専門家の専門家たる所以ではないか。こういった発言は、不安を煽るマスコミ報道と大差はない。いや、それ以下である。
世界はグローバル化している。昨今は、1年に1700万の日本人が海外に出かける。日本のビジネスマンはアフリカでも活動しているだろう。また、医師が救援にも行っているはずだ。もし、成田空港でエボラ出血熱の患者が出たらどうするのか。もしそれが、100人規模にもなったら。
とりあえず、患者の隔離はするだろう。しかし、その後である。「日本では詳しいことが調べられませんから、そちらの国でお願いします。治療法の研究もできないので、そちらで分かったら教えてください」とでも言うのだろうか。
今の日本は、まだ経済的に豊かだから外国に援助もできる。しかし、年間10兆円もの貿易赤字、原子力発電所が止まっているから追加で負担しなければならない年間3~4兆円もの燃料費の増額分、国内の産業が海外に移転してしまった結果、円安の効果も国富につながらない状況の中で、この先どれだけ持ちこたえるか。このままであと10年もしたら、状況は相当に悪化するに違いない。
今こそ「怖いから反対」でよいのか、一人ひとりが負担すべき役割があるのではないか、考えるべきではないかと思う。
今の日本は、本当に先進国といえるのだろうか。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )