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2014 年 11 月 21 日

夢のような復興 その2 - 巨大防潮堤

 東日本大震災の復興が進んでいるのか、遅れているのか、マスコミは最近その話題も取り上げることが少なくなった。ほとんどは、福島第一発電所のトラブルをことさら煽るのみである。
 以前に、このブログでも述べたが、実現に時間とお金と労力のかかる、土盛りや区画整理も果たしてどこまで進捗しているのか。夢のような復興が、今も行われているのだろうが、大して進捗していないからニュースにもならないのだろう。

 土盛りや区画整理とあわせて、東北の太平洋沿岸の被災地では、約7~15メートルの高さの巨大防潮堤をつくるという。その計画が海岸沿いのほぼすべての各市町村から出ているという。
 他にも、東南海地震で十数メートルの津波の可能性を指摘された静岡県では、駿河灘に総延長100キロメートル以上にもなる防潮堤を造るのだという。
これができたら、人々は安心して喜んで海沿いに住んでくれるのか。高さ15メートルもある防潮堤が海岸線を覆えば、海の見えない海辺の町になる。そんな町に誰が住み、誰が観光に訪れるのだろうか。

 私は土木の専門家ではないが、コンクリートで造った防潮堤の寿命は、確実に100年もないだろう。コンクリートの寿命は理論的には100年以上だが、海水にさらされ、波や風の自然の負荷を受け、表面に微細なクラックでも入れば、内部の鉄骨を腐食する。防潮堤の寿命は、長く見積もっても50~60年かと思う。その後は、巨額のメンテナンス費用を要するだろう。
 この度の地震による津波は、700年前に起きた規模との報告もある。このクラスの地震、次はいつか。その間に、10回以上も造り直すことになるのだろうか。間違いなく、数十年後の行政に莫大な負担を強いる。今でも、高速道路や橋梁などで老朽化で問題になっている。せいぜい50年前に造られたものが、だ。

 また、今回の地震による津波で各地の防潮堤は破壊されている。その付近の陸地への津波の圧力は弱まったとの報告もあるようだが、防潮堤が津波を完全に防げるかどうかは、未知数の要素もあるようだ。
 各自治体は、なぜこれを造ろうとしているのか。答えは簡単だ。そもそも、他の対策を考えるほどの余裕と発想力がないからだ。余裕ない原因の一つは、国が予算を消化する期限のためだ。
 国は、復興を早める名目で、期限を決めて早く要求しろと自治体に圧力をかける。自治体は、期限までに計画を出さなければ、国のお金がもらえない。それどころか、国の役人に能力を疑われ「なぜ言うことを聞かないのだ」などと嫌われたら、他のことでもいじめを受けるのだという。
 だから、安易な発想にしかならないのだ。国と地方のヒエラルキーが、被災者を救うべき復興にまで、この弊害が顕著になっている。

 以前にも書いたが、東北地方の沿岸には、ヨーロッパのポリスのような発想で防災型都市を造る。その中に、いくつかの防災高層マンションを造って、津波の想定より高い位置に避難拠点を造る。10階あたりにでも造れば、海抜30メートルにもなるだろう。いざという時には非常エレベーターで、そこへ住民を上げる。高齢者を離れた高台に連れて行く避難方法よりもずっと早い。

 南海沖地震では、津波の予想最大高さが33メートルという。高知県のある町では、人々が住んでいる地域の90%が津波の被害を受けるという。防潮堤は現実的ではない。大変申し訳ない言い分だが、こういった地域は、地価もそれほど高くない。ファンドでもつくって資金を集め、土地を買い占めてマンションを造ることは不可能ではないだろう。
 防災高層マンションは、普段は住宅として使えるので無駄もない。世界中の著名な建築家に参加を募って、コンペティションを行えば、各地に特徴のある町ができる。世界中から観光客が見に来る。街が発展する。
 少なくとも、防潮堤よりはずっとマシである。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )