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2015 年 1 月 18 日

経済成長 - 年頭に当たって考えたこと

 年頭に当たって何かを考える、これは子どもの時からの習慣だろうか。一年の計は元旦にありなどと、当時、親にも学校の先生にも言われた。大人になってからも、そのような思いが続いて、毎年何かを考えるのだが、今年の新年はそれが薄い。いや、考えることがここ数年同じなのだ。能力の低下か。持続性か。

 そのひとつが、経済成長である。昨年も一昨年も、年頭に書いたことだが、どうも納得がいかないのである。
 昨年末、ある意味で、突然降って湧いた総選挙。下馬評どおりに与党が盤石の議席を獲得し、国民から望まれているのは経済成長である、ということになってしまった。
 年が明けて1月、国家予算は過去最大の96兆円超だという。財政収支の赤字幅は、わずかに縮小したとはいうけれど、予算の段階ですでに赤字であることは間違いない。結果として、国全体で1000兆円超の借金はますます増える。

 経済が成長すると、景気が良くなる。景気が良くなれば、暮らしも良くなる。本当だろうか。
 私は経済問題の専門家ではないので、そのことを明確に解説するだけの知識は持ち合わせていない。しかし、経済の成長は、社会に格差を助長する。そのことは、歴史的にみて間違いないことくらいは知っている。
 その状況を修正するために、社会は新しい制度を必要とする。つまり、お金を貫流させる制度を新しくつくらなければならないわけだ。そのことを福祉の前進といえば聞こえはいいが、所詮は改善しなければならない格差が生まれることが前提にある。
 すでに、我が国の子どのも貧困率は、先進国では最悪のレベルだという。いくら働いても、年収が200万円に満たない人は、全労働者の18%にも上るという。一方で、IT産業で成功した人々は、月の家賃が400万円ともいわれる、六本木ヒルズに暮らしているのだ。我が国では、以前よりも、すでに格差が拡大している。これは、経済の発展の一つの側面なのだ。

 GDPにしても、企業の売上にしても、前年比○%の成長などという言い方が、当たり前につかわれる。プラスの成長がなされないことは悪である、という認識が一般的だが、成熟社会ではそのことが、どれほど意味のあることだろうか。企業が成長するためには市場が拡大する必要があるが、日本の人口は減っている。そうなると、よほど新しい価値観が出てきて新しい市場をつくるか、今の市場で強者が弱者を食うしかない。そのことが、個人を必ず幸せにするのだろうか。
 成長の背景に、大企業などのレベルでは、経営統合、事業譲渡などということがあるのだが、個人のレベルでは、意に沿わない転職を余儀なくされた人も多いはずだ。現実に、中小企業の位置づけは、大企業に比べて厳しさを増している。中小企業レベルでは、経営統合どころか、倒産、廃業となることも珍しくない。

 このところ、為替相場では円が安い。結果、一部の大企業は利益が増えた。個人的には1ドル、110円くらいが適切と思うが、経済誌には150円も想定されるとある。円安になれば輸出が盛んになり、経済が拡大、製造業が活性化するという話は、昭和の時代のことである。今は、大企業の製造拠点は海外にも多くあるので、円安の恩恵をそのまま受けられるわけではない。円安になっても、ストレートには輸出は増えない。
 むしろ、生活必需品では、海外から輸入されるものの多くは、物価が高騰する。例えば、牛丼である。庶民の味方である吉野家の牛丼は、300円から380円になった。他にも冷凍食品、アイスクリーム、牛乳など、数え始めたらきりがない。牛乳は国産だが、飼料が輸入のため値段が上がり、日本では酪農家の廃業が相次いでいるのだという。

 暮らしが豊かになることは、往々にしてエネルギーをより多く使うことになる。他の項でも書いたが、我が国のエネルギーは、原子力と水力以外は、そのほとんどが輸入である。化石燃料の代金だけで、毎年約28兆円のお金が海外に出て行く。そのうち、発電に使う分は約16兆円だが、約3兆8000億円は原子力発電が止まっていることによるものである。いずれにしても、これらが増大することは、基本的な国力の低下につながる。

 人口が増えないなかで、すでに多くの富を抱えていて、今のところはそれほど状態が悪化していない日本が、考えるべきことは何か。それは、経済の量的拡大を目指すよりも、経済が成長しなくても幸せを感じることのできる社会ではないか。
 心の豊かさ、他人への思いやりが基本であること。お互いがストレスを感じない生活ができること。思いを素直に伝えられる人間関係が作れること。子どもの年代では、格差がない社会であることではないだろうか。
 たまたま、私はコミュニケーションの教育、話し方教育を専門に活動している。そのことで、心の豊かさを感じていただけるよう、ご縁があって私の話を聞いていただけた皆さんを応援したいと思うものである。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )