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2015 年 11 月 29 日

母の介護 その2 - 有料老人ホーム

 母が一人で暮らすことができなくなり、急遽老人ホームに入れた。
 私が住んでいるマンションの、まさに私の部屋の目の前が老人ホームである。ということで、とりあえず体験入居ということにして、そこへお世話になった。それから、あらためて他にないかと調べてみた。普段は気にすることがなかったが、我が家から歩いて行ける範囲に、有料老人ホームは複数あることが分かった。十数か所。結構ある。

 まずは、それらに空きがあり入所できるかだ。特別養護老人ホームは、待機者が相当いるらしいことは常識として知っていた。では、民間の有料老人ホーム、民間のグループホームはどうか。すべてを調べた訳ではないが、グループホームはどこもほぼ満室。各施設とも待機者を抱えているようだ。有料老人ホームは、空いているところもあるようだ。今なら数部屋空いています、といったところが多い。母を入れたホームは、百名近い定員に対して3室空いていた。

 ではそれらに入居するには、いくらかかるのか。私の住んでいる大田区の老人ホームでは、入居一時金が700万円から1000万円くらいが多い。その他に、敷金を数十万円程度要求するところが多い。入居一時金はおおむね6~7年で償却されるのだが、入居と同時に30%償却されてしまう施設が多い。その他に、月々の負担が総額で25万円以上になる。入居一時金をゼロにすると、月々が35~40万円以上になる。これが相場のようだ。
 この相場は、地域によって差があるようだ。川崎市のホームは、総じてやや安い。東京でも、人気の住宅地にあるホームは高い。最近できた世田谷区二子玉川の老人ホームは、家族とロビーでくつろげるとか、屋上でバーベキューもできる快適なホームとテレビで紹介されていたが、入居一時金が最低2250万円だった。他にも、成城学園前駅周辺では、6000万円以上のホームもあり、実にピンからキリである。

 いずれにしても、ごく普通の老人ホームで700万円から1000万円以上の入居一時金である。これだけのお金を払える人は、果たしてどのくらいいるのだろうか。それが払えても、その後に月々の負担がある。月に25万円として、年間300万円。国民年金の支給額は約7万円だから、それに毎月上乗せしなければならない。それまで思いもしなかったが、これを払い続けることができる人は、実は少数ではないか。一般的に、貯金が少なく、年金暮らしという人は無理だろう。また、多少の蓄えがあったとしても、寿命が延びるほどお金がかかる。切なささえ感じる。

 概ねの有料老人ホームは個室だ。清潔感がある。風呂も複数、ラウンジやロビーもある。入口は吹き抜け、シャンデリアが吊られており、まるでホテルのようなイメージのところまであった。介護付きであるから、必要な時にはヘルパーさんがやって来て介護してくれる。至れりつくせりだが、それが有効なのはある程度、元気な人だ。
 事実、数か所のホームを見学して分かったことは、有料老人ホームには、介護認定を受けてはいても、健常者とあまり変わらないのではないかと思える人も多いということだ。こういった方は、そこから買い物に出たり、親せきの家に行ったり、旅行に行ったりと、自由な暮らしを謳歌しているという、炊事、洗濯、掃除もやってくれて、医師や美容師は定期的に来てくれるわけだから、まさに理想的な住まいなのだろう。
 しかし、我が母のように、足腰が弱り、認知症の症状が出てくると、シャンデリア、清楚な個室、瀟洒な庭園など、そういった設備や環境があってもそのことに感動しない。静かなロビーに、コーヒーや新聞、雑誌、書籍が置いてあっても、有効には使えないわけだ。つまり、設備、環境のいいところを探し、できる範囲でそこに入居させてあげようと思っても、それをありがたいと感じてくれることはないのだろうということだ。認知症とは、悲しい限りである。

 そして、今回、もう一つ分かったこと。見学に行くと、施設の方は「何でもします」くらいのノリで説明をしてくれるのだが、こちらからいろいろと本音を引き出す質問をすると、点滴や痰の吸引などが必要になったら病院を紹介します、という。多くの有料老人ホームは、病気になると出なければならないという現実だ。いわゆる、病気から看取りまでそこに入居していられるホームは、実は少ないのだ。
 ああ、老後を考えるとやはりお金か。”ぴんぴんころり”といきたいものだ。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )