2016 年 5 月 4 日
皆さん知っているのかな その2 - FIT
FITといっても、ホンダの車ではない。FIT(feed-in tariff)は、再生可能エネルギー固定価格買取制度のことである。この制度を維持する負担金が、数年前からすべての家庭の電気料金に上乗せされている。このことを知っている人が少ないように思われる。
一般家庭の太陽光発電システムを例にして簡単に説明する。各家庭の屋根に設置された太陽光発電パネルによって発電された電気は、電力会社に売ることができる。特に夏の昼間などは、家庭で使う電気よりも発電される量が多いからその分を売るわけだ。夜になると太陽光発電パネルは発電しないから電力会社から電気を買う。その差額で儲けを出して、太陽光発電システムへの投資を回収する。これが成り立つので、最近の住宅には太陽光発電パネルが設置されている、そういう家が増えているという仕組みだ。住宅メーカーからも、光熱費ゼロ住宅などと宣伝されている。
私は、この制度そのものに反対するわけではない。太陽光発電システムを普及させるために、補助金を出したり、電力会社が電気を買い取ったりすること、これを制度化することは良いことだと思う。
電力会社が太陽光パネルを設置した人から買い取る電気料金は、いろいろな条件はあるが、毎時1キロワット当たり約36円だ。一方、私たちが電力会社から電気を買う時の電気料金は、前回にも紹介したとおり、19円から30円なのだ。つまり、電力会社は太陽光パネルで発電された電気を買えば買うほど赤字ということになる。太陽光パネルが普及すればするほど、赤字が膨らむ。この分を補てんするのが、FITの負担金である。
もう一度言う。私はこれに反対するわけではない。しかし、複雑な思いはある。問題はその金額だ。皆さんのご理解のとおり、ここ数年太陽光パネルは増えに増えている。一般家庭にも普及が進んできたし、企業がそれ専用に土地を手当てして太陽光発電所を設置する数も多い。一般家庭は1か所あたりの規模が小さいが、企業が設置する太陽光発電は、それなりに規模も大きい。最近では、休耕農地に太陽光発電パネルを設置するようにと、セールスする業者も多いという。太陽光発電システムが増えれば増えるほど、電力会社は赤字になるから、それを補てんする負担金も増えるわけだ。
電気の検針票を見てほしい。制度が始まった数年前はまだ金額も少なかったが、太陽光パネルの普及により、この額が結構な額になっているのだ。来年度には、1カ月の電気使用量が300kwhの家庭で、年間8100円になるという。
前回にも書いたが、東京電力が700KWHを使う家庭をモデルに、電気料金が年間6000円下がると試算した。このことからも分かると思うが、300KWHの使用量の家庭とは、電気の使用量が相当に少ない、いわば省エネに協力している家庭である。それでも、年間8100円なのだ。これは自由化で下がる電気料金の比ではない。
太陽光や風力による発電が普及することは良いことだ。しかし、制度にやや無理やゆがみを感じるのは私だけだろうか。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )