2016 年 9 月 27 日
豊洲市場のトラブル - 予定通り移転させるべきだ
豊洲市場の建物部分の地盤について、盛土されていない事実が判明した。これまで何度もマスコミに取り上げられ、東京都のホームページでも、敷地全体に盛土したことが紹介されていたので、正直なところ私も唖然とした。盛土の上に、あの巨大な建築があるのだと思っていた。
今回の発端、設計変更をしたことを都民に知らせずにいたことは、明らかに批判されるに値するだろう。かつての職業を思いながらコメントしてみたい。
一つは、地下空間の存在である。あれだけの施設なのだから、地下に空間を設けることはそれほど不自然ではない。むしろ、配管のスペースとして当然のことと思う。だから、地下空間を設けることを騒ぎ立てることには、マスコミの恣意性を感じる。しかし、最近の報道では、地下空間は将来的に有害物質が出てきた時の作業スペースの意味で設置したという。そうなると、地下空間の存在より目的性に問題が移る。有害物質が出ることを分かったうえで、なぜ、盛土をしなかったのか。
盛土をしなかった理由は、簡単なことだ。施工がしやすいからであり、コストが下がるからだ。盛土をした上に巨大な建築物を建てると、基礎を相当に掘り下げるか、杭を相当に深く打たなければならない。構造的に不利だ。基礎を掘り下げることは、盛土を掘り下げることであり、一部はその土を省くことになる。しかし、そうであっても、有害物質の問題がある。そこで、当時の担当者は、その危険度とコストの相関を考えたはずだ。では、なぜ、専門家会議の意見を無視したのか。いや、無視したわけではなく、参考にした結果が今の設計だったのだろう。
次に、知事をはじめ、都の歴代幹部は土盛りをしていないことを知らなかったのか。このことも、多分知らなかったのだろうと思う。つまり部下が報告を上げていなかったか、極めて簡略に説明していたのだろう。知事や局長クラスの職員は、基本的に建築については素人である、どの程度まで説明するかについては、現場の技術者の判断がある。つまり、OKさえもらえばいいのであって、そうなると、多少のことは説明を省く。このことが良いか悪いかといえば、もちろん良いわけはない。しかし、上司も忙しいし、技術的なことを一から積み上げて説明するより、結論を先に言い、あとは本人の興味に合わせて説明する成り行きになる。詳しく説明して議論になるより、大まかに説明して波風を立てず、というわけだ。私も不動産会社で、事務系の上司には、そのようなことをしたことが多々あった。
現場の設計者は、盛土をしなくても、有害物質はある程度の安全の範囲に入ると思ったはずだ。その判断が正しいかどうか、私には分からない。意見が採用されなかった専門家会議のメンバーは、大いに不満だろう。
現時点では、現場の地下水の分析結果から、微量のヒ素やベンゼンが出たというが、環境基準の数十分の一程度だという。環境基準自体が、相当な安全率を見ているはずだから、それで今すぐに危険というわけではないだろう。少なくとも、オープン型の建物で、ネズミが異常に繁殖しているという今の築地よりはずっと安全ではないか。
そういうわけで、私は今の豊洲を不安視しているわけではない。せっかく建築が終わろうとしているのだから、早く移転すべきだと思っている。より安全性を高めるのであれば、地下空間の床板を厚くする工事や地下水対策などを、並行して行えばよい。
それにしても、今回の決定の手順や情報公開の在り方はひどいものだ。巨大組織の機能不全化、職員のおごりか。土盛りを説明する都のホームページが、あれだけ長い期間公開されていたこと、だれが見ても地下水であるものを、雨水の漏れなどと説明していた都の職員にはあきれるばかりだ。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )