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ブログ

2016 年 10 月 8 日

豊洲市場のトラブル その2 - 環境基準

 前回のブログを書いてからも、マスコミは相変わらずである。連日、この問題を取り上げている。地下に溜まった水から環境基準値以下のヒ素が出てきたとか、敷地の一部の井戸から環境基準値を超えるベンゼンが検出されたとか、ベンゼンには揮発性、燃性があるので心配だ、とか言っている。

 その後、いろいろなことが分かって来た。
 私は、化学物質の危険性については素人なので、物質そのものへの危険性については何とも言えないが、以下の常識は持っている。
 しかしながら、私もうっかりしていた。それは、マスコミに登場する環境基準の定義である。今、問題になっている環境基準は、いわゆる排出基準だと思ってニュースを見ていたのだ。つまり、排出基準とは、人間が置かれている周囲の空気や触れる可能性のある水など、要するに取り囲まれている環境である。
 ところが、昨今ニュースで取り上げられている環境基準は、飲用基準をいっているらしいのだ。飲用基準となると、要するにその水を一生飲み続けても、人体に影響がないであろう基準だ。要するに、食用に適するかというものだ。
 だから、地下の水から猛毒のヒ素が出てきたといっても、環境基準値以下であるならそれを一生飲み続けても健康に影響しないということだ。でも、だれがあの水を飲むのだろうか。一部の井戸から環境基準値を超えるベンゼンが出たといっても、その水を使うわけではないし、一生飲んでも影響しない値の1~2倍であれば、1回くらい口にしてもそれでどうこうなることはないだろう。

 排出基準は飲用基準の数倍から数十倍の値を定めているはずだから、井戸からそういう水が出たら、飲まずに捨ててしまえばいいだけのことだ。敷地内のたった1か所の調査用の井戸、それも深い部分からのサンプルだそうだから、何も騒ぐことはないのだ。
 ちなみに、放射性物質が食品に含まれることが許される基準値は、一般食品で1キログラム当たり100ベクレル、牛乳で1リットル当たり50ベクレル、水道水で1リットル当たり10ベクレルである。一方、廃棄物として一般ごみと分別せずに捨てても良い基準値は、1キログラム当たり8000ベクレルである。このことからも、体内に直接取り入れることと、そうでない場合の基準の違いが分かるだろう。

 だいいち、井戸水はきれいだ、なんて思っている人がいたら、それはほとんど根拠のない話だ。東京に限らず、井戸水には何らかの有害物質が含まれているだろうことは、常識的に考えられる。その中のごく一部のきれいな水だけが「○○の水」などと、ペットボトルに詰めて売られているに過ぎないのだ。
 私の実家にも井戸があった。私が子どもの時、その水が飲めないものかと、父が保健所にサンプルを持ち込んだことがある。結果、有害物質が含まれていたらしく、飲用不適ということで断念した経緯がある。ということは、私は子どものころから、有害物質を含んだ地下水脈の上で生活していたことになる。(そうか、だから私は頭が悪いのか。)以来、井戸水は散水程度にし、今は使っていない。が、地下水脈は今もあるはずだ。環境基準値に適合しない井戸は、世の中にいくらでもあるはずだ。

 この問題は、だれがいつ、盛土をしないと決めたのか、まるで犯人捜しの様相である。これだけの大きなプロジェクトであるから、それは一人の技術者ではあるまい。チームで決めたことだろう。しかも、そのことにより、大幅なコストダウンを見込める、つまり善かれとの判断だったはずだ。
 確かに、今回の都の対応は最悪だ。小賢しいウソが見受けられる。要するに手続きが悪かったのだ。技術者が決めて、そのことを事務方に伝えていなかったのだろう。誰が決めたか、だれが隠したかの議論、それはそれでやっても良いが、結果として豊洲の施設が危険かどうかは、まったく次元の違う話である。

 前回も書いたが、オープンエアの築地市場の現実は、生の魚が無造作に置かれ、トラックがその魚のすぐそばを走り、空気中のほこりも、汚染物質も、PM2.5物質も降りかかる施設だ。一般の外国人も勝手に入ってきて、魚に直に触れることができる。このことは一時問題になったので、今はロープを張り、ガードマンが頻繁に注意しているらしいが、空気がオープンであることに違いはない。

 安全性に不安がある、安全性を確認できてからなどと、感情論を言っていないで、これだけの税金をかけたのだから、よほどの危険性がないならば早く移転すべきである。正確なリスクを冷静に伝えるマスコミの登場に期待したいものだ。無理か。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )