2017 年 8 月 16 日
便器考察 その2 - これはもう電気製品
便器は普段の私たちの生活の中にある。以前は和式が多かったが、最近では洋式のほうが一般的になってきた。私は小学生の時に初めて洋式便器を使ったが、当初は便座に自分のおしりが触れることに抵抗があり、使い勝手が悪かったことを覚えている。
洋式便器は水の力で便を流すわけだが、その水圧は高い位置にあるタンクに水を溜めることで得られる。家庭用の便器ではロータンクを備えたものが多い。その上部には手洗いがついているものもある。なぜロータンクかというと、かつての水洗トイレはタンクが天井付近の高い位置にあったので分類的にローなのである。和式が多かったので便器とタンクが一体化されていなかったからである。今は洋式便器でタンクが一体化されたものが当たり前になったので、そういう言い方もしなくなった。
便を流す方式には、大きく分けて、洗い落とし式、サイホン式、ジェット式、サイホンジェット式の4種類がある。
洗い落とし式は、タンクに貯めた水を勢いよく流して便を押し流す方式で、以前はこれが圧倒的に多かった。流し方にもメーカーによって工夫が見られ、単に流すのではなく便器の内部に輪を書くように流す方式や、シャワーのように流す方式などがあり、その方式によって水の音にも特徴があった。
サイホン式は、水を流すことで便器の底の水(封水)の量を一時的に多くし、その重みで一気に流す方式で、流れる水の音が比較的小さく、ゆったり流れるので主に高級機種に採用されていた。
ジェット式は、便器の底に小さな穴があり、そこから勢いよく水を流すことで便を流し去るタイプだ。勢いがあって気持ちがよい。
サイホン式とジェット式を組み合わせたのがサイホンジェット式だ。一時これが流行してホテルでもお目にかかったが、現実にはサイホンに使う水とジェット水流に使う水の割合がうまくいかず、現実に流し残しが出るなど使い勝手が悪いものもあった。
以上のことは、流す方式の基本的な仕組みであって、その仕組みの割合を変えて、最近ではいろいろなタイプが出ている。私のマンションで使っていたものも、洗い落とし式の要素を含んだサイホン式で、流れる水の音は結構大きかった。
その他にも、例えば吸引式があり主に業務用である。吸引タンクに一時的に真空状態を作り、便器側の弁を空けて一気に吸い取る。必要な水の量が少ないので、航空機や新幹線のトイレに採用されている。
そこで、今回自宅で採用したネオレストである。この機種は、流す方式がジェット式である。しかし、以前のように便器の前に縦型のタンクがない。あるにはあるが便器より下の位置にあり、すっきりしたデザインである。したがって、便を流す水圧が得られない。ではどうするか。従来のロータンクからの水圧より強いジェット水流を、電動ポンプが起こすのだ。大で4.8リットル、小で3.8リットル、エコで3.2リットルなのだが、ポンプからのジェット水流が強力なので確実に流れる。さすがに3.2リットルでは、やや心もとない。汚物が管の途中で留まってしまっては困るので注意が必要だが、少ない水量でシュワーッとそれが便器の底から消えるのは爽快だ。
その他にも、自動で人を検知して蓋を跳ね上げる機構、同時に電解水で便器の内側を濡らし汚れが付きにくくする機構、便器の周囲をほのかに照らす機構、便器の下部から温風を出し寒さを軽減する機構、用便が終わると検知して自動で水を流す機構、人が去ると自動で蓋を閉める機構など、至れり尽くせりである。
おしりを洗う機能もこれまでの機種は、水道の水圧で水を噴出する仕組みだったが、この機種は水道水圧に加えてポンプでも制御している。水も単なる噴出ではなく細かい水粒の連続噴射であったり、霧状の噴射であったりする。もちろん消臭機構も自動で働く。
これまでは、高級レストランや高級ホテルにしかなかった機構が、家庭用の機種にも付いている。贅沢といえばそうかもしれないが、トイレにストレスがないのはありがたい。これはもう単なる便器ではない。明らかに電気製品である。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )