2017 年 10 月 16 日
お話になりません ー S社のお客さま相談室
「話にならない」という言い方は、いろいろな意味につかわれる。つまり、自分の思うような回答や結果が得られない場合や、議論の前提となる現実の解釈が違っていて話がかみ合わないときにも「あいつと話しても、話にならない」などと言うことがある。
しかし、ここで問題にしたいのは、それ以前のことである。最近、自分が客の立場でいろいろな人と話をすると、話にならないことが多いと感じる。こちらの思いに応じてくれていない。結論だけを述べてくる。解決への結論を急いでいると言ってもいいかもしれない。とにかく、会話にならないのだ。
去年の12月だった。我が家のテレビの画面が急に黒くなり、映像が映らなくなった。音声も出ない。12年前に30万円ほどで買ったのだが、何の不満もなく使っていたテレビだ。当時としては、液晶40インチハイビジョン対応テレビは結構高額な買い物で、それなりの思いで買ったものだった。最近は、こういった家電品は性能も格段に向上している。修理するより買い替えたほうが安いことも常識的には分かる。
しかし、そこが私の人間として古いところである。とりあえず、お客さま相談室に電話をしてみた。
電話に出たのは、ベテランと思える声の女性である。
私「ちょっと古い製品なのですが、修理ができるものならそうしたい気持ちもありまして、お電話したのですが……。」
係員「それ、なおりません。」
(私は、少しムッとして)
私「あの、私はまだいつ買ったのか、製品の型番も言っていないのですが……。」
係員「では、どうぞ言ってください。」
私「ええ、12年ほど前に購入した、○○番という製品なのですが……、」
係員「ですから、それ、なおりません。」
(私は、相当にムッとして)
私「すみませんが、この電話はお客さま相談室ですよね。私は故障の症状も言っていないのですが……。」
係員「では、言ってください。」
私「ですから、テレビを見ていたら、急に画面が真っ黒になって、右下に○○というサインが出て……。」
係員「ですから、それは直りません。」
あとは推して知るべしである。これがお客さま相談室か。お客さま通告室ではないか。相談であれば、私の気持ちを受け止めてくれて、そのうえでこうしたほうがいいですよ、という展開ではないのか。相談された実感がまったくない。最低限、まずは向こうからテレビの型番や故障の症状を聞いてくれて、会話が成り立つのではないか。直らないならそれも仕方がない。しかしながら、せめて右下のサインの意味についての説明はないのか。「残念ながら……」「お気持ちは分かりますが……」くらいの会話があってもいいのではないだろうか。
要するに、補修部品が7年までしか保管されていないからなおらないという言い分なのだが、私もそのことは知っている。私の使っている旧モデルに、現行モデルから汎用される部品はないのか調べるのでもいいし、最近の製品は良くなっているので、買い替えたほうがよろしいのではとアドバイスする、それが相談というものだろう。
結局この女性と私は、会話がかみ合うこともなく「長い間使っていただいてありがとうございました。」「次の製品もぜひ当社を……。」などの言葉も全くなく、忌々しい気持ちで電話を切ったのだった。
電話を切ってから、家電量販店に行ってみた。今までより画面が一回り大きい50インチ、4K対応ハイビジョンテレビ(韓国製)が69800円で売られている。結局国産のもう一つのS社のものを11万円ほどで購入した。有楽町のビックカメラで夕方4時に注文、2時間後の夜6時には家に届いた。修理するほどのこともないわけだ。
でもね……。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )