2017 年 12 月 8 日
白鵬のスピーチ - 品格の乏しい私の感想
今年の九州場所での横綱白鵬のスピーチが問題になった。あえてスピーチとしたのは、インタビューへの単なる回答ではなく、それをきっかけにして彼が一方的に自論を展開したからだ。「力士を代表して」「膿を出し切って」「日馬富士と貴ノ岩を土俵に戻してやりたい」「万歳!」これらの言葉が、マスコミ、有識者、相撲協会から問題視されたのだ。
私はあのスピーチを聞いていて、興奮した。心が熱くなった。体が震えたといってもいいくらいだ。よくやったと思った。
「力士を代表して」は、彼なりの思いと責任感がよく出ていると思う。白鵬は心の底から相撲のことを思っているのだと思う。相撲界をけん引していかなければならないとの思いが強いのだと聞く。確かに横綱は最高峰であり、単に強いというだけでなく、白鵬という存在は「代表して」というだけの価値があるように思う。
「膿を出し切って」は、表現がよろしくない気もするが、相撲協会の体質を述べたものではなく、今回の日馬富士の件について包み隠さず真実を述べ「力士みんなで不祥事を起こさないように」という決意を述べたと解釈するべきだろう。
「土俵に戻してやりたい」について翌日の新聞には「土俵に戻す」と書かれており、一力士にそんな権限があるのか、僭越だなどという論調が書かれていたが、彼はそうは言っていない。「戻してやりたい」と気持ちを述べたものであって、私も含めて多くの相撲ファンの気持ちをも代弁したのではないか。それこそマスコミのイメージ操作だ。
日馬富士事件に揺れた場所で、解決がついていない状態での「万歳!」が不適切という、偉い方のコメントも翌日にあったが、少なくともあの場所にいたお客は、そのトラブルを乗り越えて行こうという気持ちでそれに応じたのではないかと思う。「これからも大相撲をよろしく」「皆で乗り越えて行きましょう」などといったイメージが、あの九州場所の雰囲気だったと思う。
その後の日馬富士の引退表明は、個人的には残念だ。その後の報道によると、彼は相撲以外にもボランティア活動に熱心で、勉学に励み大学院にも通っていたという。また、日馬富士は貴ノ岩を普段から心配し、かわいがってもいたという。当日の問題もその後に、お互いが和解していたのだという。
もちろん暴力、傷害を負わせたことは、裁かれなければならない。だから、警察への告発もそれ自体は間違っていない。不起訴にすべきだと言っているのではない。むしろ起訴相当だと思う。
民放などは、今日でも毎日のように、この問題を流し続けている。これでもか、である。不愉快でテレビのチャンネルを変えたがどこも同じ。結局、当初いわれたビール瓶も灰皿も誤報だった。事実関係が不明な中で、影響を拡大させすぎた。白鵬のスピーチも日馬富士の暴行も、ここまで問題を大きくしたのは、間違いなく心無いマスコミだと思う。
場所後に、相撲協会は白鵬に対して強く戒告し、彼もまた謝罪したという。横綱の品格を損なったという理由らしいが、横綱の品格とは何か。親しく本音を話さないことが品格なのだろうか。未熟な私にはよく分からない。
そもそも、昔はなかったが、いつからか行われるようになった優勝力士への土俵下でのインタビュー、野球のヒーローインタビューみたいなものに私には映る。そのこと自体が相撲をより大衆化させた。相撲もファンがあってのことだから、「万歳!」いいんでないかい。品格に乏しい者の言い分である。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )