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ブログ

2022 年 1 月 14 日

嬉しくて寂しい日 ― 娘の結婚式に寄せて

 1月8日(土)娘の結婚式、親族代表のあいさつをした。
 以下、その要旨である。

 「アイ・ラブ・ユー」という英語を、夏目漱石は「今夜は月がきれいですね」と訳した。ある翻訳家はアメリカ映画の中で「私、死んでもいい」と訳した。少なくとも「愛しています」より、より人の思いを感じる。愛の形も、愛の表現も、様々な場面で様々な形や思いがあるわけだ。

 私は37年前、愛する女性と結婚した。一緒にいられることがとにかく嬉しかった、楽しかった、幸せだった。まさにそれが結婚だと思った。その後、双子の女の子が私の子どもとしてこの世に生まれてきた。家族が4人になった時、私は自分の命より大切な命が3つあることを自覚した。家庭を持つこととは、自分の命より大切な命を得ることだと思った。その思いを変わらずに抱えた自分が、今もここにいる。
 その自分の命より大切な命の娘が、結婚式をしたいと言ってきた。そして今日を迎えた。私の頭の中は竹内まりあの楽曲「嬉しくて寂しい日」が頭の中をくるくる回っている。

 3年前、娘が付き合っている彼を連れてきた時、私は彼にお願いをした。
 「私は娘がかわいい。愛おしい。その娘と付き合うなら2つのことを約束してほしい。」
 「一つは、タバコをやめること。娘は幼いときに小児ぜんそくで苦労した。今も呼吸器はあまり強くないと思う。妻も妻の家系もぜんそく体質だ。娘にタバコの煙を吸わせないでほしいのだ。」
 「二つ目は、うちの娘と付き合うなら、うちのルールにしたがって付き合ってくれ。うちは明るい穏やかな家庭だ。それはお互いに家族に心配をかけないことが行き届いているからだ。具体的には、遅くとも11時をめどに帰宅させること。終電を逃しての帰宅をするような付き合い方はしないこと。」と。
 勝手な言い分だと思うかもしれないが、その数年前に川崎市で、深夜にOLが殺された通り魔事件があった等のことを考えると、娘を危険な目に遭わせるわけにはいかない、切なる親の思いだ。
 その後、彼はタバコをやめ、帰宅も常識的な時刻を気にしてくれたようだ。

 この度、娘は結婚したわけだからうちのルールは放免だ。結婚して家庭を持つことの意味はそれぞれが感じれば良い。しかし、家庭を持つ以上それぞれのルールは作ってほしい。
 例えば「お互いを敬う」「きちんと貯金する」でもいいが、「お互いに相手が悲しむことをしない」とか「無駄遣いはしない」「他人に迷惑をかけない」でもいい。それは「……をする」というより「決して……をしない」という誓いのほうがいいと思う。それはそれぞれが違ってもいいし、口に出して言わなくてもいい。しかし、それを決めることは人生の支えになる。きっとしっかりした家庭を築くことになる。

 とにかく、明るく、ホッとする家庭を作ってほしい。パパとママとがそうだったように。二人ならではの「アイ・ラブ・ユー」を実現するのだ。
 しかし、その結果を親の世代は見ることができない。それが人生。そこで、今日この席にいらっしゃるご友人の皆さん、皆さんがそれを見届けてほしい。そして、この二人が違うなと思ったら、どんどん言ってやってほしい。「ボーッと生きてんじゃねーよ。」と。

それがやがて去りゆく親世代の願いです。どうぞ二人をよろしくお願いします。
本日はご参集くださいまして、ありがとうございました。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )