2022 年 12 月 26 日
電気料金の値上げに賛成です ― エネルギーについて考えよう
電気料金は2016年に低圧顧客への小売りが原則として自由化され、携帯電話会社、鉄道会社、石油会社、旅行会社などが新規参入した。これらの自由契約料金は、昨今それなりに値上げされている。
大手電力会社の従量電灯契約が規制対象として残り、今回はその部分の料金の値上げが申請されたという次第である。各社概ね30%から40%の値上げで、一般的な家庭ではいくらの負担増になると、マスコミの報道が盛んである。
物の値段はもちろん安いに越したことはない。電気はライフラインだから使わないわけにはいかない。政府も低所得者向けに一部負担などしているわけだが、こんな時代だからこそすべての人が電気の使い方、エネルギーについて意識を深めるべきだと思う。だからあえて言う。電気料金の値上げに賛成です、と。
現代の我々は、電気はいつでも使えて当たり前だと思っている。しかし、その電気をつくるためのエネルギー源が日本にはない。外国からの調達に頼っているのが現状だ。日本の電気の多くは液化天然ガス(LNG)と石炭を燃料として発電している。ロシアが武力をもってウクライナに侵攻し始めたので、世界のエネルギー情勢は逼迫している。ロシアからパイプラインで天然ガスを直に輸入していたヨーロッパは、その量が見込めなくなったのでLNGの輸入量が増えている。今やエネルギーは世界中で国家レベルでの奪い合いになっているという。
発電では一時も燃料を切らすわけにはいかないので、多少高くても燃料を調達しなければならないが、LNGも石炭もただ量を確保すればいいというものではない。
石炭はこのプラントにはこの地域から掘り出された石炭というように品質が決まっていて、そのプラントに合わない石炭では発電できないという。質の悪い石炭はエネルギー効率が悪くCO2が多く出る。良質の石炭こそが奪い合いになっている。
また、LNGは備蓄ができない。日本の備蓄量は設備容量では2週間ほどだが現実には7日から10日分しかない。減る分をどんどん運んで来るしかないのだ。
結果として日本に入ってくるエネルギー価格は、この1年で2倍から3倍に、石炭はスポット価格では4倍に、LNGは5倍にもなっているのだという。電力会社が発電する単価は、売る単価より高いという逆ざやになっている。今回の値上げはやむを得ないと言わざるを得ない。
しかし、より真剣に考えたいことは電気の使い方である。エネルギー資源のない私たちの国は、本当に必要な電気だけを使うべきである。街には煌々とした宣伝やライトアップがあふれている。駅や空港などで見かけるデジタルサイネージは、確かに便利だがあれだけの数があれば相当な消費電力である。パチンコ店は以前より多少地味にはなったが、街全体ではディスプレイは相変わらず華やかである。
東海道新幹線はピーク時間帯には3分に1本、私の地元の東急電鉄も日中は6分に1本の電車が来る。どの電車も満員にはなっていない。便利ではあるがそれほど必要か。
家庭でも各部屋、電気やエアコンを点けっぱなしにし、部屋では薄着ということはないだろうか。今、電力危機に陥っているウクライナを引き合いに出す気はないが、エネルギーを節約するために家族はできるだけ寄り添って暮らす、こまめにスイッチを切る、本当に必要な電気だけを使う、工夫をすれば3割程度の節約は可能だろう。
昨今、夏冬の電気の逼迫が報道されるようになった。世界の状況を考えると日本がエネルギーをいつまでも安定して調達できるとは限らない。電気が思うように使えないという時代がすぐそこに来ているのかもしれない。
今の私たちにはそれほどの覚悟が必要ではないか。電気料金の値上げに際して考えたい現実である。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )