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ブログ

2023 年 3 月 10 日

大人の事情 ― ANAの機内で考えたこと

 千歳空港から羽田空港への便に乗った。私は7列目のA席に座った。5列目以降が普通席で、その前にはプレミアムクラスの席がある。水平飛行になるとカーテンで仕切られる。

 離陸してしばらくしてから、子どもの泣き声が聞えてきた。その声はそのカーテンの向こうから、つまりプレミアムクラスの席からであることに違和感を覚えた。その声は泣き止むこともあったが、今度はむずがって騒ぎ出すという具合、概ね1時間繰り返されていた。その後、羽田空港に向けて着陸準備のためカーテンが開けられて分かったこと、その子は2歳くらいの男の子で父親の膝の上に抱かれていた。航空運賃は3歳未満が無料なので多分2歳だろう。

 私も年に何回かプレミアムクラスを利用することがあるが、普通運賃に1~2万円の加算が必要。それは旅先で仕事がうまくいった時の自分へのご褒美としてのこと。食事、ビール、ワインなどの提供を受け、快適に帰りたい、仕事の疲れを癒やしたく、ゆっくり、静かに過ごしたい場合である。

 飛行機の中で小さな子どもが泣くのは、器官が気圧に敏感だからだそうである。私は何度も飛行機に乗っているので良くあることと認識している。私は子どもが好きなので、あまり気にならない。それよりもそういう事情だと、親御さんが周りのお客に申し訳なさそうにしているのを見てかえってこちらが気を遣う。その子どもにさりげなく視線を送ってあやしてみたり、あえてそのお母さんに話しかけてみたりして(男親にはしないが)、気にしなくても良いですよというサインを送ったりすることもある。

 しかし、先のケースではどうだろうか。その空間で子どもに泣かれたり、むずがられたりしたら、迷惑とは言わないがプレミアムクラス空間の雰囲気はかなり変わる。
 そこで、プレミアムクラスには小学生以下でも料金がかからない3歳未満でもいい、少なくとも子どもは座らせないというルールをつくってはどうか。理由は要らない。大人の事情、その会社のポリシーでよい。

 私が利用している銀座のレストランは、小学生以下の子どもは帯同を受け入れていない。それは、ここは静かに食事を楽しむ空間です、静かに食事ができる大人になったら来るべきところです、という店のポリシーが光っている。
 今はできないけれど、いつかは行ってみたい、いつかはやってみたい、いつかは手に入れたいなど、大人の世界を意識させること、これは立派な教育だ。子どもと大人を分けることは差別とか児童蔑視などではない。何でも許されていたら人は成長しない。
 以前にも書いたが、ある市のコンサートホールには、子どもが騒いでも他の客に迷惑にならないようにと、子ども連れ専用の防音室がある。その部屋はスピーカーから音を出すようになっている。愚の骨頂。生の音でなければコンサートに行く意味はない。コンサートは静かに音楽を聴くことができる人が集まる場所。大人の世界だと教えることが子どもへの教育だろう。

 社会全体で子どもを育てるといういうが、ほとんど政治的スローガンだ。では一人ひとりの市民が、また企業が何をすべきか、具体的行動につながる論が見えてこない。昨今話題になっている、おすし屋さんでの中学生、高校生のいたずらにも、どこか通じるものを感じるのは考えすぎか。
 社会でダメなものはダメなのである。理由は要らない。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )