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2023 年 3 月 19 日

バケモノの子を見ました ― 人には複数の親がいる

 劇団四季のミュージカル「バケモノの子」を観劇した。
 私はこういう話に疎いのだが、これには小説としての原作と映画があったようで、それが劇団四季のオリジナルミュージカルとして制作されたということのようだ。正直のところあまり期待しては行かなかったが、ストーリーに感じる作者の哲学、劇団四季ならではの驚くほどの舞台演出。よい印象をもって見終わった。

 ストーリーは、人間の世界には隣り合ったバケモノの世界があり、人間の世界が渋谷、バケモノの世界が渋天街という設定だ。そのバケモノの世界に、父親は離婚、母親は病死という不運な9歳の男の子が迷い込む。そして熊徹というバケモノに出会い、九太と名付けられ弟子になる。この熊鉄は乱暴者であったが、息子ほどの人間を弟子にしたことで人間的?に成長する。またこの子もバケモノの子として人間関係?の中で成長するというストーリー。その過程でさまざまな出会いや事件が起こる。

 ストーリーの多くを占めるのは熊徹に育てられる九太の修行の日々だ。
 このミュージカルの原作映画の脚本と監督をした細田守氏によると、子どもの成長にはたくさんの父親が存在するという。この子は実の親には育てられてはいない。熊徹とは血のつながりはないけれど、熊徹ほかさまざまなバケモノの中で、また人間社会で出会ったガールフレンドによって成長していく。その中で、自由とは何か、正義とは何か、人間の心の中にある強さ、弱さ、善と悪といった概念を学び、また見る者に考えさせるのである。

 私自身のことを振り返っても、実の親はもちろんだが、特に思春期を過ぎてから影響を受けた人は多い。その人との関係が今の自分をつくっていると言っても過言ではない。血のつながった親ではないがある意味では親だ。大きな影響を受けた人の言葉の数々は鮮明に思い出す。中学2年生の1年だけの担任だった谷川先生、高校1年と3年の担任だった高野先生、就職してすぐに指導的立場で同じ仕事をしてくれた新井さん、名古屋で上司だった皆川さん。この方々とのつながりは今はないが、私の心の中では彼(新井さんは女性です)らに育ててもらったという思いは一生消えることはないだろう。

 ミュージカルだからというわけではないが、映画にしても小説にしても、練られた作品は哀愁とともに人生の豊かさと示唆を与えてくれることを実感した次第である。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )