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2023 年 8 月 13 日

人はヤクザになれるんだ ― ビッグモーター社の不祥事に思う

 ビッグモーター社の不祥事が話題になっている。テレビやインターネットで見聞きするかぎり、これはもう不祥事というより犯罪である。

 例えば、入社した社員は早々に自社で車を買わされるという。社員に自社製品の購入を勧めることは、どの企業でもあり得る話ではある。しかし行きすぎれば、しかも「買わないとどうなるか……」などと責められれば、それは脅迫、まるでヤクザの論理である。購入に際しても10年ローンが条件ということが横行していたという。一般的に自動車のローンはせいぜい3から5年だろう。明らかに常識外。信販会社に有利、会社の実績としてはプラス、購入者には明らかに不利だ。

 例えば、修理の不正を指示する上司に対して拒否やそれはやめるべきと指摘した社員、営業成績の上がらない社員、担当した客が購入をキャンセルした場合などには「ボケ」「カス」「死ね」等の暴言が口頭で、メールでも昼夜を問わず繰り返されていたという。上司が部下の胸ぐらをつかんで罵声を浴びせるという暴力沙汰も日常茶飯事だったそう。つまり意見の違いは許さず、弱者が屈服、退職するまでそれらの行為が続いたらしい。まさにそれはヤクザの世界だ。

 私は昨年にこの会社の川崎店で次の車の購入を相談したことがある。そういえばと思って、最近その店の前を通ってみた。報道されたように、確かにその店の前だけ街路樹が幹から切られていた。街路樹は税金で整備したもので公共の財産である。緑の木々は街の環境を良くするために植えられ、住民のためのものだ。どうやらこの会社では店舗前の木々を枯らす、勝手に伐採する、緑地をコンクリートで覆うなどの行為を全国で行っていたようだ。これらは会社の公的な指示ではなく、末端の社員が勝手にやったというが、幹部が知らなかったはずはないだろう。末端の社員が罪に問われるほどのガンバリを見せることでこの社員は出世する。これもヤクザの常套手段。もっとも政治家も時に使う手口だが。

 報道によると、この会社の社員は約5千数百人だというが、これまでの退職者は数万人にのぼるという。毎年数百人の新入社員を採用するが、そのほとんどは1年以内に辞めるという。不正に関わりたくなかった、社風に耐えられなかったなど、事情はいろいろだろうがそれは正解だ。危ないと思ったら離れること、君子危うきに近寄らずだ。
 この会社に残っているのは、厳しい社風に耐えて成績を出した者だというが、その者たちの報酬には社会の不利益が含まれている。それは結果としてヤクザの世界だ。

 この会社の多くの社員は家庭を持つごく平凡な社会人なのだろう。しかし、やっていることはヤクザと同じ類の行為、犯罪に近い相当に非常識な行為である。その理由は結局は報酬か。お金が生んだゆがんだ価値観と言わざるをえない。労働は社会をより良くすることにこそ本来の価値観があるべきなのだが。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )