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2023 年 11 月 13 日

富裕層ビジネス ー 何か違う気がします

 新型コロナウィルスが5類になった今年の夏は各地でイベントや祭りが4年ぶり、以前のように行われた。海外からの訪日客数も2019年当時に戻っているという。それはそれで結構なことだ。
 一方で、こんな報道もあった。祇園祭が40万円、阿波踊りが20万円、ねぶた祭が100万円、これらは祭りを見るための観覧席の値段だそうだ。祇園祭は2人単位だから80万円、お弁当とワインなどの飲み放題が付くという。これらは各地とも完売。祭りの通りには歩道があり、そこで立って見物するのはもちろん無料だ。

 私はスノーボードをする。ニセコスキー場には何度か行ったことがある。ニセコスキー場には比羅夫、東山、アンヌプリ、花園のゲレンデがある。花園ゲレンデに初めて行った時にはレストハウスの食堂も木造で、今時こんな施設があるのかと思うほど古く汚く、人もまばらな田舎のスキー場であった。その後数年たって、食堂が壊され豪華なレストランができた。ランチのメニューは2000円から5000円、そこでワインを飲みながらくつろいでいたのは、ほぼオーストラリアかニュージーランドからのスキー客だった。数えてみたが日本人はほとんどおらず、どう見ても10%以下。私はその一人で居心地が悪かった。
 その花園ゲレンデに数年前、高級ホテルができた。年末年始の最も値段の高い時期に一部屋を一人で利用すると、1泊が300万円。本当にそれで泊る人がいるのかどうか検証してはいないが、このホテルは今シーズンも全日空スキーツアーなどで検索すると、平日の利用でも航空券込み、リフト券別、食事別で2泊で50万から80万円くらいで出てくる。北海道の人のうわさでは、利用客は中国人らしい。他のホテルなら2泊でせいぜい10万円くらい。それでも安くはないがこのホテルは別格。

 産油国、中東の富裕層の人々が観光に行く場合、目的地はほぼヨーロッパ方面だという。政府はその層を日本に向けて誘致しようとしているらしい。世界の富裕層を取り込めば、10%の客数で30%以上の外貨を稼げるというわけで、日本の観光業もその方向にシフトしているという。昨今、ごく一般的なホテルでも結構値上がりしているが、来年、銀座には1泊のルームチャージが200万円するホテルがオープンするという。このホテルは日本人より外国人を相手にしている。

 国税庁の統計によると、日本の年間の給与収入は2000年前後に約460万円だったのが、昨今は約440万円なのだという。約20年で20万円ほど下がっている。これが年収だから可処分所得はもっと低い。
 文部科学省の統計によると、義務教育の子どもがいる家庭の17%が貧困家庭だという。そんな日本で、外貨獲得のために外国の富裕層に頼る、このビジネスモデルといわれる現象に違和感があるのは私だけだろうか。
 その昔、私が20歳くらいの時、日本は一億総中流意識の国といわれた。皆がそれなりに幸せを感じ、いつかは……と思いながらも、その生活に満足しつつ希望を持った人が多かったように思う。今は昔である。
 外国の方が日本を旅行することは大いに結構だが、1泊数百万円のホテルに泊ることができる人が、日本のありのままを理解できるのか、こちらも彼らを理解できるのか、所詮は旅行とはいえ国民同士の理解が深まらない訪日は無意味ではないか。いっそのこと鎖国しろ、もちろんそういうわけにはいかないが。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )