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2024 年 6 月 19 日

何ということをしてくれたのだ ― 東京都

 中央区の晴海地区に、東京都が分譲マンションをつくった。正確にはいくつかの棟から成り立っているので棟によって条件は違うが、ここではマンションと表現する。
 このマンションは目の前が東京湾、レインボーブリッジやお台場が見渡せる好立地。一帯はオリンピック選手村に使われた地区で有楽町、築地から近い。将来的には新しい地下鉄が建設され、東京駅に直接乗り入れることができるとあって人気の物件だった。購入希望者の抽選は住戸によっては200倍を超えたという。
 価格は概ね6,000万円から7,000万円。それなりの値段ではあるが、それなりのサラリーマンも貯金をすれば、フルにローンを借りて何とかなる価格である。昨今の東京のマンション相場からいえば高くはない。むしろ割安だ。

 その第1期の入居引き渡しがあり、待ちに住民が引っ越してきた。ところが、夜になっても半分くらいの住戸にしか窓に明かりが点らないのだという。実際に住んでいない住戸が多いということだ。なぜか。
 報道によると、このマンションを一人で20戸以上も買った人がいるのだという。つまりこの人は自分が住むためではなく投資用に購入しているのだ。そういう人が相当数おり、個人、法人の立場で購入している。そしてすでにいくつもの住戸が新築中古のマンションとして市場に出ているという。その価格は概ね1億3,000万円ほどで、当初の分譲価格の倍だ。自分で住まずに転売している人が相当数いるのだ。また、この価格帯で売買が成立しているのは、投資家が購入しているか海外マネーが流入していることが想像に難くない。引き渡しと同時に価格が倍になる、これは投資というより投機である。
 このマンションだけが原因ではないが、東京の分譲マンションの平均価格は1億円を超えている。こうなるとそれなりのサラリーマンでは手が出ない。それなりに懸命に働いてそれなりにコツコツ貯めても無理。

 このマンションの場合、何でこうなったのか。明らかに東京都の無策である。しばらくしてから200倍もの抽選倍率に疑問をもって対策を講じたようだが時すでに遅し。この状況を想像できなかった、実にめでたい職員である。
 都が税金を使って建設したマンションである。それなりの都民がそれなりに努力した結果、それなりの努力が報われて幸せに暮らせる町をつくる、それが行政の目的のはずだ。
 購入希望を1人1住戸にするとか、購入後の居住を義務づけるとか、対策は取れたはずだ。応募に制限を付けるべきだったのではないか。これでは税金の無駄遣いどころの問題ではない。税金を使った事業がそれなりに頑張っている都民を排除し、家が持てない結果になっている。まさに格差を助長したわけだ。
 かつてマンション分譲の仕事をしていた私にとって、実に腹立たしい東京都の無策である。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )