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2024 年 9 月 7 日

ゴースト・アンド・レディを観ました - 創作の妙

 劇団四季のミュージカル「ゴースト・アンド・レディ」を観た。フローレンス・ナイチンゲールを題材にした史実に基づくフィクションである。私はナイチンゲールについては、従軍看護婦として活躍後に今の看護制度を確立した偉人という程度の知識で詳しくはないが、ミュージカルを観てさまざまな事実を知り得た。以下、看護師と表記する。

 彼女はイギリスの貴族の子女であったこと。当時、看護職は身分の低い者が就く職業だったこと。従軍看護師として若い看護師を束ねるリーダーに志願して就いたこと。活躍したのは約100年前の連合軍とロシア軍とのクリミアの戦いであること。当時の病院は今のトルコにあり、下水や汚物が適切に処理されておらず衛生環境が劣悪で兵の半数以上は伝染病による死亡だったこと。衛生環境を整備し、看護師として一人ひとりの患者に寄り添ったこと、など。

 劇のストーリーにもあったが、その過程で彼女は妬みや女性であるからの迫害を受け、厳しい状況下で同僚からも裏切りを受ける。実際のナイチンゲールもそうだっただろう。現実の苦悩を直接に表現すれば、それは伝記や小説のようにシリアスで楽しめるどころの話ではないに違いない。このミュージカルではそのことを直接的に表現せずに、ゴーストの存在に映して表現しているところが創作の妙である。

 このミュージカルでは、他人には見えないゴーストが彼女の苦悩により沿ってストーリーが展開する。彼女が挫折した時には、ゴーストは彼女の命を終わらせる、そういう約束の下にストーリーは展開していく。最後までゴーストは彼女を殺すことなく、彼女は天命を全うする。ある意味で楽しみながら俯瞰でき、終局の場面では観る人の多くが涙する。劇団四季のミュージカルはこれまでに何度も観ているが、ラストシーンであちこちからすすり泣きが聞えてきたのは今回が初めてだ。

 ミュージカルは所詮は創作娯楽ではあるが、映画や小説を読むことはもちろん、それをとおして何を感じるか、それは我々がより豊かな思いを抱くことにつながると思う。そんな意味で、私はかつて会社を経営している時には社員と観劇会も催した。ミュージカルを観劇してからお酒を酌み交わしながらも人生を語り合う。それは単なる娯楽を越えた貴重な体験と考えるからである。
 人の前で人生を語る立場の講師は、より豊かな人格形成に向けて努力しなければならない。M先生の残してくれた人生の教えである。それはあくまでも例えばであるが。答えのないのが人生である。

代表

関根健夫( 昭和30年生 )